LTV(顧客生涯価値)を高めるために通販会社が行うべきこと
2015年度(2015年4月~2016年3月)の統計で前年比 5.9%増、売上高6兆5,000億円を突破(公益社団法人日本通信販売協会 発表)したといわれる通信販売市場。
市場の拡大要因としては、楽天やアマゾン、スタートトゥディ等、通販プラットフォーム系企業が市場参入・拡大の牽引役となっていること、店舗系ネット通販、BtoB系通販企業の拡大、マーケティング支援ツールからフルフィルメントサービスまで、周辺企業による通販支援サービスの充実等が挙げられています。
市場の盛り上がりに比例して通信販売事業者数も増加傾向にあり、最近では新規顧客を獲得するためのROAS(Return On Advertising Spend:広告費用対効果)が悪化傾向にあると言われています。
そのため、新規顧客を育成、ロイヤルカスタマー化し、いかにそのLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)を高めるかが通販事業にとってますます重要な要素になっています。
今回は、競合他社が増加するなかで通販企業が差別化を実現し、LTVを高めるための方法について考えます。
そもそもLTVとは?
LTVとは顧客が生涯を通じてその企業にもたらす利益のことを意味します。簡単に言えば、
「顧客がその商品・サービスを利用し続ける上で支払う金額の総額」
をあらわす言葉です。その顧客が競合他社に移ってしまうなど、商品・サービスを使わなくなってしまうまでの金額総額のことです。
一般的にあらゆる市場で、市場内の競争激化に比例して顧客獲得費用も増加していきます。そんななかで既存の顧客のシェアを維持・拡大するうえで、LTVは、このような顧客シェアを管理するための指標のひとつとして活用されています。
通販企業が利益を得るためには割引や特典などのキャンペーン展開をおこなうことも方法のひとつですが、売る姿勢を強く打ち出した、比較的営業色の強いメッセージ訴求によりかえって既存顧客の離反を招いてしまい、結果LTVを減少させてしまうケースもあります。
LTV向上には商品の宣伝ではなく企業メッセージの訴求が大切
通販企業が既存顧客との良好な関係を築き、LTVを向上させるために必要なことは、顧客に向けての「商品の宣伝」ではなく、その企業の商品・サービスを繰り返し利用したくなるように顧客を「ファン化」させることです。
顧客のファン化を図るため、多くの通販企業が自社サイトをメディア化し、代表者のメッセージや商品が生まれるまでの物語、生活に役立つ知恵・レシピなどのコンテンツを掲載することで企業文化やメッセージを訴求し成功を収めています。
また、企業メッセージを発信する媒体としては、もちろん自社で運営するウェブサイトの活用も重要ですが、コミュニケーションツールとしての書籍出版を通して同業他社との差別化を実現し、顧客のファン化を図っている企業も増えています。
通販企業の出版成功事例をいくつかみてみましょう。
通販企業の書籍出版成功事例
- 北欧、暮らしの道具店『暮らしノオト』『オトナのおしゃべりノオト』
- ほぼ日刊イトイ新聞『小さいことば』『ほぼ日手帳ガイドブック』
- 株式会社えがお『えがお経営』
- 株式会社オークローンマーケティング『ロングセラーを呼ぶマーケティング』
- 株式会社再春館製薬所『再春館製薬所が教える おうち漢方』『再春館製薬所 ニッポンいちの社員食堂―女性社員800人の健康・美・やる気を引き出す』
- 株式会社やずや『創業者夫婦が初めて語る「やずや」の秘密』
- 株式会社ユーティーオー『中小製造業 逆転のブランディング』
わずか2年間で数百万円だった売上が2億円を超え、驚異的な成長を遂げたオンラインショップ。 北欧の雑貨や食器を中心に販売しています。 「雑誌のような楽しめる場づくり」として、ブログを活用するとともにインテリアや旅行、 料理についての特集記事を掲載した冊子を制作、販売しています。
1998年6月に創刊し、現在は1日150万PV以上のアクセスを集める人気サイト。 購読料は無料、広告も掲載していないにもかかわらず、ネット通販で高い収益を上げる 日本有数のメディアでもあります。 同サイトの代表でありコピーライターの巨匠である糸井重里氏が日々つづるエッセイを 基にした『小さいことば』シリーズや、オリジナルグッズである手帳シリーズの使い方を 解説したガイドブックを出版しています。
黒酢・ブルーベリー・青汁・肝油など通信販売を行っている、テレビでおなじみの 健康食品の通販サイト。「えがおの黒酢」を4年連続黒酢サプリメント売り上げ日本一に 育て上げた代表、北野忠男氏の経営哲学を綴った一冊です。
通信販売事業のショップジャパンを運営するオークローンマーケティング代表の著書。 日本国内で大人気となった『ビリーズブートキャンプ』や『トゥルースリーパー』などの 人気商品を生み出してきた自身の経験をもとにロングセラーの生み出し方を伝えています。
基礎化粧品「ドモホルンリンクル」や漢方の医薬品・化粧品の製造・販売をおこなう企業。 食と健康は密接なかかわりがあるという「医食同源」という漢方の考え方を基にした レシピや漢方の使い方についての解説書を出版しています。
にんにくしじみ・雑穀・にんにく卵黄・香醋など、主に健康食品の通信販売事業を 展開している日本の食品メーカー。やずやの創業から現在までに創業者の矢頭夫婦が経験した 七転び八起きの物語を収録。
日本国内では稀有な、オーダメイドのカシミヤニット製品メーカー、ユーティーオー。 世界を旅する旅行屋であった同社の代表が旅先でカシミヤに出会い、ニットメーカーを 創業するに至った経緯と、工場をもつ岩手県北上市の「ふるさと納税」返礼品としても 人気を博している同社の製品が生まれるまでの物語を綴った一冊です。
幻冬舎メディアコンサルティング
太田 晋平
- 【無料ダウンロード資料】> 企業出版成功事例集
- 【事例】> 『中小製造業 逆転のブランディング』
- 【企業ブランディングコラム】> 企業の”ストーリー”を発信するべき理由