未来医療と「新しいまちづくり」 ~これからの超高齢社会に向けたわたしたちの「役割」とは~

2025年問題 求められる医療体制
2016年現在、あと10年後には団塊世代の全てが後期高齢期に入り、 人口の1/4が75歳以上、人口の1/3が高齢者となる超高齢社会に突入します。 今後、医療・介護関係の財源が膨大な額となり財政問題が深刻化する2025年問題。 赤字国債に財源の半分以上を依存している日本経済はこの現状を改善すべく、 高齢社会に向けた「新しいまちづくり」を提唱しています。 それが、施設・病院から在宅での介護・医療を目指す 「地域包括ケアシステム」です。
高齢者数の増加とともに高齢者の独居世帯や高齢者のみの世帯が増加し、 約8割以上の人が病院等の医療機関で「死」を迎えている現在に対し、 今後は、介護難民や孤独死の問題が懸念され、「看取り」の問題が浮かび上がります。
家族と過ごした、できる限り住み慣れた場所そして地域で 療養や治療を行い、安心して自分らしい生活を実現できる社会を目指さなければなりません。 介護や医療における生活支援と予防が一体的に提供されるよう 在宅医療が中核をなす 「地域包括ケアシステム」を構築することが重要となるのです。
地域包括ケア向けた在宅医療の推進
安心・安全な在宅療養を送るためには、地域包括ケアシステムの構築だけではなく、 同時に高齢者の栄養管理や摂食・嚥下リハビリテーションなどの「在宅医療」の推進も重要になります。 最も効果的で比較的すぐに行うことのできるのが「在宅歯科医療の推進」 つまり、介護予防を前提とした高齢者への治療や口腔ケア等の推進です。 たとえば、誤嚥性肺炎は口腔ケアや口腔リハビリの不備により発症します。 これを在宅歯科医療の推進により、要介護高齢者へ口腔ケアを実施することで病気を防ぐ。 そうすると、肺炎になると一人当たり200万円程かかる医療費を抑えることが出来るだけではなく、 結果、社会保障関係財源の伸びを抑えることにも繋げられるのです。
また、咀嚼障害を伴う要介護高齢者には歯科医師の関与が必要になるように、 在宅医療には要介護高齢者へのケアを行う医師と医療機関の連携が必要です。 現在、在宅医療を受けている要介護高齢者は介護保険のケアプランで介護サービスを受けているため、 家族や主治医以外にも、ケアマネージャーや訪看ステーション等の病診連携も不可欠になるのです。
未来医療においてそれぞれの「役割」を考える
高齢社会のもとで孤独死や介護難民を生み出さないためにも高齢者の健康を支えるだけでなく、豊かなコミュニケーションを気付くことの出来る「新しいまちづくり」が必要です。 医療機関は、経営の安定を求めた医療提供をするのではなく、これから役割を考えなければなりません。 言い換えれば、患者と家族を守り、多くの人に安心して生活できる援助としての地域包括ケアが求められているのです。 医療機関だけではなく、コミュニティに属するそれぞれの役割を一人一人が考え、 まずは口腔機能の管理や介護施設での口腔ケアの推進をはじめる等、 これからの未来医療に向け、一歩ずつ踏み出す必要があるのです。
幻冬舎メディアコンサルティング
野村 美紀
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