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社史制作のポイントとは? 社史のつくり方と具体例を徹底解説

著者:幻冬舎メディアコンサルティング 編集局・部長 伊藤英紀

創立○周年、商品誕生○周年といった企業の節目では、さまざまな記念行事やイベントが企画・実施されますが、その中でもポピュラーなのが「社史」「周年史」の編纂・制作です。その社史の制作・編纂のポイントは何か、具体例を交えて見ていくことにしましょう。

社史・周年史とは何か?

自社のこれまでの歩みを記し、1冊の書籍という形に残す「社史」「周年史」——。多くの企業では、会社案内や、社内報など、折に触れてさまざまなパンフレットや冊子を発行していますが、社史で取り扱うのは、それら日常的に発信されている情報とは違います。自社が創業から現代までどんな変遷を辿ってきたのか、ヒット商品が生まれた背景や、ターニングポイントとなった出来事はなにか、OB・OGが積み上げてきた努力の数々、そして創業者から連なる経営陣がどんな思いで、ここまで歩んできたのか……。長期的なスパンで、時系列に会社の歴史を体系化してまとめるのが、社史の一般的なかたちです。

社史があることで、創業者の理念に端を発する会社の存在意義や、社会的使命、仕事への誇りと情熱といった自社の思いを、歴史に裏打ちされた説得力のあるかたちで表現できます。社史・周年史は社員や顧客、取引先など、関わるすべての人々に、自社についてより深く理解してもらうための欠かせないツールといえます。

社史を制作するメリット

社史を制作する具体的なメリットは、大きく4つあります。

①社員の意識が向上し、組織の求心力が高まる

今の会社があるのは、歴史の積み重ねがあってこそ。企業理念が生まれた背景から、ここまでの苦労と過去の教訓、時代の波を乗り越えてきた力などを、一つの物語として体系的に伝えられるため、社員に会社の理念やビジョンがより深く浸透し、組織の求心力が高まります。

②自社への理解が深まり、今後の企業運営に役立つ

これまでの歩みを、時代背景とともに振り返る中で、その時々の経営判断や業務改善、ビジネスモデルの変化、どんな対応がどういった結果につながったかなど、具体的な事例が体系的にまとめられていきます。それによって自社への理解が一層深まり、今後の企業運営に生かすことができます。

③節目のタイミングに、改めて周囲に思いを伝えられる

会社の歴史は、感謝の歴史ともいえます。現在の顧客や取引先がいなければ、節目を迎えられなかったはずです。編纂を通じて社外とのつながりを改めて確認した上で、完成した社史をお世話になった人々へと贈れば、感謝の念を示すことができ、関係者との絆が深まります。また、会社の思いや考えを社会に発信する絶好の機会ともなります。

④貴重な資料や情報が整理でき、継承される

歴史の長い会社ほど、資料が社内外に分散してしまいがちです。貴重な資料も、段ボールの中に埋もれてしまって日の目を見ないようでは意味がありません。社史の制作は、そうした資料や情報を洗い直し、整理するきっかけとなります。また、完成した社史は資料集の役割も果たし、写真や記録が整理されたかたちで次世代へと引き継がれます。図書館などに寄贈すれば、地域の資料や産業の歴史といった観点から学問的資料として継承され、社名が残ります。

このようなメリットから、近年は大企業だけでなく中小企業やベンチャー企業も、積極的に社史の制作を行うようになっています。社史を掲載する媒体も、書籍からウェブサイトまで多岐にわたっています。

⑤新人の採用や社員教育に活用

社史のまとめ方にもよりますが、例えば経営戦略や自社の普段関わらない部署の取り組み、企業の軌跡など、周年のタイミングは社員に対して企業理解を深める絶好の機会です。

制作した社史を社員に配布したり、研修用の資料として活用するなどすれば、今後の採用や人材育成につながります。

⑥取引先との関係性を強化

社史を制作することで、取引先との関係性強化に役立つこともあります。特にユニークな企画や、知られざる企業の軌跡、創業当時の想い、社風などをまとめた社史であれば、取引先にも自社に関心をもってもらい、より理解を深めてもらうきっかけになるでしょう。

 

社史のタイプとは?社史の種類

一口に「社史」といいますが、形式に明確な定義が存在するわけではありません。会社ごとの社史編纂の目的に合わせて、さまざまなタイプの社史がありますが、系統としては大きく4つに分かれます。

①「資料型社史」

資料としての価値に重きを置き、歴史を忠実になぞり、年月の経過と起きた出来事を克明に記録していくタイプです。大きな年表を設け、事業に関わるあらゆる資料を細かく分類して入れ込んでいくとともに、取引先や地域とのつながりといった背景の歴史まで記すケースが多く、学術的な観点からいっても、十分有用な資料となります。社史としてはオーソドックスなタイプといえます。

②「ドキュメント型社史」

会社の歩みを一つの物語として表現し、ドキュメンタリードラマのような読み物として仕上げるタイプです。事実関係や時間経過を綿密に追うというより、創業者はどんな思いで会社を作ったか、困難にいかに立ち向かったか、ヒット商品開発の裏にはどんなストーリーがあったかといった、「人間ドラマ」を中心に展開されます。読んで面白い社史や、より多くの人の興味を引く社史を作りたいときに適しています。

③「ビジュアルブック型社史」

文字を読む負担を減らし、視覚的に会社の歴史を表現することを目的とした社史です。目を引く写真や美しいデザインを盛り込み、文字はあくまでそれらを補足するためのものという位置づけで、見た目にもアーティスティックな仕上がりになりやすいです。ドキュメント型社史よりもさらに読み手を選ばず、若い世代にも共感を得やすいタイプといえます。

④「社員参加型社史」

アンケートや資料の収集、インタビュー協力などを通じ、できるだけ多くの社員に編纂に関わってもらって作り上げていく社史です。社員とその家族に向けて制作されることが多いタイプです。自社の歴史や経営判断といった大局的な視点よりも、これまで社員たちがどのように会社を支えてきたかという局所的な視点の積み上げによって、社史を編んでいきます。社史編纂をひとつのプロジェクトとして活用すれば、社員たちの絆や自社愛が深まるはずです。

どんなタイプの社史を選ぶかについては、社史編纂の「目的」と「読者」によって最適解が変わってきます。「目的」と「読者」は、制作においての大きなポイントといえますから、まずはそれを明確にしておく必要があります。なぜ社史を作るのか。誰に届けたいのか。この2点をしっかりと固めておかないと、まとまりがない印象の社史になりがちですから、注意が必要です。

また、冒頭でも触れましたが、幻冬舎メディアコンサルティングが得意とする「集客・販促、採用などの経営課題を解決する『周年プロジェクト』としての社史づくり」の詳細については、こちらのページをご覧ください。

社史づくりで成功するための出版社の選び方

社史の制作期間は、どのような社史を作るかによって異なってきますが、1年から3年の間が一般的です。これまでの会社の歩みを総ざらいするわけですから、制作期間にはできるだけ余裕を持っておきたいところです。

社史制作の大まかな流れとしては、まず社史編纂プロジェクトのメンバーを指定するところからスタートします。広報部など自社の情報発信に長けた部署や、愛社精神の強い人材、社歴の長い社員といった顔ぶれになることが多いといえます。担当者が決まったら、社史作成の目的やコンセプトを固めた上、パートナーとなる出版社の選定に進みます。そして出版社と契約し、その道のプロのアドバイスを受けて、資料集めやインタビュー、原稿作成といった作業を行っていきます。一通りできあがったら、文字校正や内容の校閲などの確認作業に入り、何度か修正を繰り返して、完成となります。

社史編纂の課題としてよく挙がるのが原稿の書き方です。社史編纂の目的に合わせた、論理的な構成とわかりやすい文体が求められ、かつ原稿の分量も多いため、なかなかハードルが高い作業です。プロのライターに依頼するケースも一般的ですが、そうしたハンドリングも、出版社の腕次第といったところで、いかによい出版社と出会えるかで、社史の質が変わってきます。

出版社を選ぶ際は、作業の代行役としてではなく、自社の思いや理念をくみ取ったうえでパートナーとして併走してくれる相手を選ぶ必要があります。予算はもちろん大切ですが、これまでの実績も重視し、担当者とも必ず顔を合わせて、制作への情熱やプロ意識の高さをしっかりと確認しましょう。

社史を出版するとどんな効果があるのか?

最後に、実際にドキュメント型の社史を出版した会社の事例を一つ紹介しましょう。100年の歴史を持つ木工家具メーカー、飛騨産業の事例です。過去には60億円の売り上げをほこりましたが、バブル崩壊を機に厳しい状況が続いていました。

そんな中、事業の立て直しを託され社長となった岡田贊三氏は、「社員に改めて、ビジョンを理解してほしい」という思いで社史出版を決意します。そうしてできた『よみがえる飛騨の匠』は、ストーリー性を持つ上質なビジネス書となり、流通した書店でも注目を集めました。その後の反響も大きく、TV『カンブリア宮殿』の取材や、講演依頼なども殺到したのです。結果として、社史の出版が会社の信頼性を高め、認知度を向上させ、経営を再び上昇気流に乗せる追い風となったのです。

 

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