業界内部でしか知られていなかったウェブマーケティングの実態が白日のもとに。ダメな業者の見分け方も紹介した一冊
ウェブサイトやSNSでの広告宣伝は、マーケティング活動の一環としてもはや当たり前になっていますが、クライアントが「この広告、本当に効果があったのか?」と不信感を持つことも少なくありません。著者の後藤晴伸氏はウェブマーケティングの業界で下請け、孫請け、ひ孫請けの仕事をするなかで、このような実態に対し疑問を持つようになりました。それぞれの顧客のニーズに合わせて成果を出せるネット広告にするために、2014年、後藤ブランド株式会社を立ち上げました。2016年に上梓された『ウェブマーケティングという茶番』では、業界の“裏側”を告発し、ウェブマーケティングが本来あるべき姿を提言しています。
急成長で人手不足のため手抜きが常態化し“自称ウェブマーケッター”がはびこっている
ウェブマーケティング業界には、広告代理店や制作会社、検索したときに出てくる順位を上げる対策をするSEO会社を始め、ネット広告を担う会社が数多く参入しています。しかし クライアントにとって一番の問題は、広告宣伝費をいくらかけても売上額や動員数が増える気配がなく、業界用語でいう「コンバージョン」につながらないことです。営業には熱心に通ってきたのに、契約したとたん顔を出さなくなり、効果がない理由を尋ねてものらりくらりとかわされて納得できる答えがなく、月次レポートは内容が薄い上に何を言っているのかよく分からない……これでは不満が募る一方です。
なぜこうした業者がはびこるのでしょうか。
業界が急成長したため人手不足で顧客のフォローに手が回らない。とりわけ知識や経験を持った人材が少ないので素人同然の“自称ウェブマーケッター”が幅を利かせていると後藤氏は指摘します。さらに実際よりも広告に反応があったように数字を見せかけたり、広告代理店が下請けや孫請けに丸投げしてピンはねもしている実態を紹介し、「顧客志向のウェブマーケティング会社は皆無に等しい」と断言します。
業界の舞台裏を印象づけるため過激なタイトルをあえてつけた
ウェブマーケティングはやっても無駄なのかといえば、そんなことはありません。ウェブ媒体はテレビのような電波媒体よりも低額で始められて、しかもターゲットを絞り込んで広告を打つことができます。やり方次第では売上を劇的に増やす最強の武器になると後藤社長は強調します。
いかにもよさそうなことを言いながら実は効果を出す方法が分かっていないウェブマーケターと、専門用語で煙に巻かれてしまうクライアントが、結果的に茶番劇を演じてしまっています。業界の舞台裏でそんな悲喜劇が繰り広げられていることを強調するために、『ウェブマーケティングという茶番』という過激なタイトルにしました。
ウェブマーケティング業界では多くの専門用語が飛び交い、その手法もSEO、リスティング広告、アフィリエイト広告、ランディングページ制作などさまざまです。こうした用語や手法を知らずにウェブマーケティングを理解することはできませんが、ただの解説ではなく、手法がどのように使われるか、それぞれの注意点は何かを含めて紹介することにしました。そのため特に「費用対効果を正しく見極めるウェブマーケティングの基礎知識」という章を設けました。
そしておそらく読者の皆さんが最も知りたいのが、だめなウェブマーケティング業者の見分け方でしょう。これについても1章を割き、どんな質問をすれば化けの皮が剥がれるかを紹介しています。章の最後にはチェックポイントと注意点をリストアップしました。
読者ターゲットの中心は、ネット広告を利用していたり、これから始めようと検討している経営者や担当者です。ウェブマーケティングに興味を持っている一般の読者も想定し、誰でも読みやすく理解できるように配慮しました。
なお2020年に刊行した増補改訂版でも触れていますが、予想外だったのが同業者からの反響です。後藤氏は「同業者を敵に回す覚悟で」「ここまで書くのか」というぐらいにその実態を暴いたのですが、反発よりもむしろ「その通り」という賛同や納得の声が多く寄せられました。「うちの運用を手伝ってほしい」と頼まれて、パートナー契約を結んだ会社もあるといいます。
効果を上げた事例をまとめて紹介クライアント側の問題も指摘している
この書籍は、単なる暴露ものではありません。ウェブマーケティングを活用して効果をあげるポイントとして、たとえば「ゴールはクリック数や問い合わせ数ではなく売上増」「ターゲットのセグメントをきちんと切ること」などのアドバイスをしています。2020年の増補改訂版では利用者が増えたインスタグラムや動画広告についての解説や、広告が効果を上げた後藤ブランドの事例について新たな章を加えました。
ほかがやっているからうちでもやってみたというような動機でウェブマーケティングを始めると、手抜きして手数料だけ取る業者のいい“カモ”にされてしまいます。現実には業者に任せきりにしてしまうクライアントが多く、何のためにするのか分かっていなかったり、業者への手数料は安ければ安い方がいいという姿勢が「茶番」の温床となっています。
著者が業界の裏側を知るからこそ指摘することができた問題の数々は、それ自体が興味深い読み物となっています。もちろんそれだけでなく、ネット広告で失敗しない方法を知ることができます。その第一歩は、だめな業者を選ばないことです。
またウェブマーケティングに限らず、マーケティング全般やセールスプロモーションに生かすことができるヒントもちりばめられています。読者がそれぞれの立場で本書を活用していただければ幸いです。
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- 書籍名:『ウェブマーケティングという茶番』
- 著者名:後藤晴伸:著
- 概 要:もう、名ばかりウェブマーケティングに騙されない!