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なぜ“安売り”は悪なのか

著者:GMCブランド戦略室

自社の商品やサービスが売れないとき、対策として真っ先に思いつくのが「安売り」ではないでしょうか。むしろ、顧客から「もう少し手頃な金額なら考えるんだけどね」などと、暗に安売りを要望されるという経験をされた方も多いのではないでしょうか。

安売りをすれば、たしかに売上は上がるかもしれません。しかし、企業ブランディングを考えたとき、自社商品の安売りに打って出るのは決して良いとは言えません。むしろ会社の価値、商品の価値を大きく下げてしまい、長期に渡ってブランドイメージを傷付けてしまう最悪の手段とすら言えるのです。

顧客は良い商品を安く手に入れ、会社はより多くの売上を上げられるはずなのに、なぜ安売りがいけないのか。それはブランディングという企業価値を自ら傷付けてしまう行為にほかならないからです。

安売りをしなければ売れないと考えるのは泥沼のはじまり

顧客はより良いものをより安く手に入れたいと考えている、そのようなイメージは決して間違いではありません。そもそも、誰もが同じように考えているものです。

しかし、売上が伸び悩んだからといって、顧客が求める安売りを安易に実行することはおすすめできません。なぜならそれは、ライバル企業との果てしない安売り合戦の引き金となる場合があり、ずっと安売りを続けなければならない「泥沼のはじまり」とすら言えるものだからです。

価格を下げるという行為は価値を下げるという行為

価格を下げることで起こる弊害は、ライバル企業との安売り合戦だけではありません。

価値があると送り出した商品を自ら、この商品にはそこまでの価値はなかったと訂正する行為ですので、それまでの価格で買っていた顧客に対する裏切りになる恐れがあります。安売りを知ったそれまでの顧客は、きっとがっかりするでしょうし、クレームを受けることもあるかもしれません。

もっとも大切にするべき、商品価値を定価で受け入れてくれた顧客を自ら裏切ってしまうとどうなるのかは明白です。安売りの価格が適性と感じる人や、もっと安くてもいいのではと考える人だけが残ります。

価値というものは、スペックや品質だけではなく、さまざまな要素を持っていますが、安売りという行為はそういった付加価値を自ら切り捨て、価値を下げてしまう行為なのです。

下がる価値は商品だけではない。会社のイメージやブランドの価値が下がる

また、安売りをすることで起こる致命的な弊害は、一度安売りのイメージが付いてしまうと、会社のイメージやブランドの価値も同時に「安売りをするもの」とみなされて下がってしまうことです。

安売りをしたあとでは、いかに定価を高く設定しなおしたところで、顧客は「どうせしばらくすれば安売りをするのだろう」と考えますし、安売りした価格が本来の定価であると周知されてしまい、結局は安売りした価格設定以上の価値を取り戻せません。せっかく築き上げてきたブランドイメージに、「安売りすることがある」という余計な情報が追加され、ずっと残り続けることになってしまうのです。

ブランディングとは、他にはない価値を提案することで生まれるものです。商品に込められた思いや、その商品の背景にある物語、手にすることで得られる付加価値を描くことで、商品は品質やスペック以外の価値を持ちます。

独自の価値を得ることで、単純な価格の比較以外の意味を帯びたブランドイメージを、自ら手放して傷付け、価値を剥ぎ取ってしまうのが安売りという行為なのです。

もちろん「安売り」そのものがブランディングになることもあります。しかし、それは価格競争をしても勝ち残れる体力のある大企業が、製造や流通のコストを極限まで低下させることに成功して安定的に商品やサービスを提供できる場合に限ります。そうでなければ、どこかに無理が生じて経営を継続することが困難になってしまうでしょう。

一時的に売上が上がっても、失うものが大きいのが安売り

安売りをすることで、一時的に売上が上がることもあるでしょう。しかし、長い目で見たとき、やはり失われるものは大きいのです。一度でも付いてしまった安売りのイメージを挽回することは難しく、ブランドの価値を再度高めるのは非常に困難です。

安売りをした商品に込めたさまざまな付加価値のすべてが失われるのと同時に、これから送り出される商品にも同じように「安売り」というマイナスの価値が付けられてしまいます。売上のための安売りは、長期に渡って得るはずであったブランド価値の蓄積と売上の両方を失ってしまう行為なのです。

まとめ

売上の改善を考えたとき、商品の持つ価値の中で価格だけに注目するのではなく、さまざまな面から商品の価格に見合う価値を創出していくためのブランディングを行っていく必要があります。

「安くしてくれたら買う顧客」ではなく「高くてもいいから買いたい」という顧客を大切にし、そうした顧客が一人でも増えるように商品やサービスの価値を高めるようなブランディング施策を考えていくことが大事なのです。

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