融資引き締めのピンチだからこそ不動産会社がとるべき対策
昨今の「不動産投資ブーム」――。 このブームにより「サラリーマン大家」が爆発的に増加しました。 しかし、このブームに陰りが見えています。
金融庁は、2017年春から「担保性や属性よりもその賃貸の事業性をもっと重要視するように」と通告しました。 2016年から過熱気味のアパートローンについて「金融機関によるアパートローンの貸し出しが多いのではないか」と貸し倒れの懸念を抱いたのです。
実際、マイナス金利と相続税の増税が重なり、初めて不動産投資を行う人がここ2、3年急激に増加していました。 「自己資金0円からの不動産投資」などと謳うような「○○大家」と呼ばれる有名大家が多く現れ、彼らに憧れて投資を始める人も少なくありませんでした。
では、「不動産投資ブーム」の発端となった“融資”が厳しくなったというピンチを、不動産会社はどう乗り切ればよいのでしょうか?
本コラムでは、現在の融資状況と不動産会社の動向から、不動産会社が取るべき対策まで解説していきます。
今までの融資状況と不動産業界の動向
2017年春の金融庁の通告により、「新築アパ—トを業者の作成した事業計画で購入する」という、今までのような買い方ができなくなりました。 実際、2017年8月22日付の日本経済新聞は「個人向けアパートローンは、2017年4~6月の新規貸出額が前年同期比15%減の7171億円だった」と報じています。 初めての賃貸経営者には融資を行わないと判断した銀行が多かったのでしょう。
元々不動産投資とは地主や大家業が所有する物件を担保に行ってきた投資方法でした。 現在、にわか大家のなかには新築といえども空室を抱え、本業のサラリーから持ち出しが発生しているケースも珍しくありません。融資の件数が増加しているなか、このような状態が深刻化して返済が滞るケースがあり、金融機関の財務に影響が出てくることを金融庁は懸念しています。
しかし、実際の金融機関の動きを見ると、新規客には貸し渋っていても、もうすでに取引のある客についてはこれまで通り融資をしているケースが散見されます。 これは、一度取引をしているとその金融機関の“顧客”になっているからです。 金融機関からすると、融資引き締めの通告に従わなければならない反面、できれば多く融資したいというのが本音なのです。
融資基準が厳しくなると、100%に近い借り入れで物件を購入していた人達が減るので、物件の需要が下がっていきます。 それに伴い、物件の価格が下がる可能性があるのです。 現在と逆で2016年に融資と購入が活発であった時は、物件の平均利回りが低くなっていました。 したがって、これから物件の需要が下がることで購入しやすい価格に戻り、利回り平均も上がってくる可能性があります。
これからは、初めてアパートローンをフル活用して不動産投資をする人には、参入しにくい環境が続くと考えられます。 しかし、前述のように不動産の相場が下がるので、購入しやすい物件も増えてくるとの見方もできます。 中古で割高だった物件の価格が下がるため、ある程度の自己資金がある人にとってはチャンスと言えるでしょう。
不動産会社が取るべき対策
では、このような状況で、不動産会社にはどのような対策ができるのでしょうか? 融資が引き締めになったからと言って、会社の目標金額や個人のノルマは変わらないのが現実でしょう。 このピンチの時にぜひ取り組んでおきたい対策をご紹介します。
①リピーターの確保 先ほどお話したように、融資引き締めにより個人向けアパートローンの新規貸出額が増えることはないでしょう。 つまり、新規客に貸し出す可能性が低いということです。 そうなると、既存客をリピート客にしていく必要があります。
②融資の必要がないくらい資金を持っている人を集客する 今までは、「手持ち資金がなくても大丈夫」と言って集客し、融資へ誘導していたということも多いのではないでしょうか。 ですが、融資が受けにくい現在、同じように集客していても、融資を受けられないお客様は物件を購入できません。 そのため、最初から融資を受ける必要のないほど自己資金を持っている人だけを集客します。 具体的には、セミナーの段階で「年収1000万円以上」や「自己資金1000万円以上」を参加条件とします。 こうして条件を最初に設定しておくことで、フィルターにかけることができるのです。 このひと手間を先に行うだけで、融資の心配をせずに営業ができます。
「不動産投資ブーム」に頼らない企業になるために
融資が受けにくい現在。 以前のように、誰にでも不動産を売ることができなくなっているのではないでしょうか。 このような状況の時だからこそ、上記の2点以外にも、リピーターを増やすためにサービスを見直してみたり、販売する物件を他社と差別化したり、さまざまな工夫を考えられるはずです。
「不動産投資ブーム」に左右されない企業になるために。 今、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
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