書店は本を買うためだけの場所じゃない! 経営者のための書店活用術
経営者にとって、情報収集は欠かせない仕事の一つ。 経営者の情報感度の高さが、会社の経営を左右するとまで言われています。
まだインターネットが無かった時代、情報のオアシスは紛れもなく書店でした。 しかし現在は、インターネットの普及により書店数が激減。 日本著者販促センターによれば、1999年には全国に2万2296軒あった書店は、2013年には1万4241軒に落ち込みました。 一方で、電子書籍が台頭し、各書店チェーンや大手取次会社が電子書籍と書店を結びつける取り組みを始めています。
一方で、昨今はネットから得られる情報の危うさも叫ばれています。 2016年には、株式会社DeNAの運営する医療系キュレーションサイトWELQを巡る騒動が起き、他サイトも相次いで非公開する事態となりました。 DeNAの騒動の原因の1つは、医療の専門家ではないライターが執筆していたことにあります。 この問題は、誰でも情報発信ができるという魅力の裏にある、大きな危険性を私たちに突きつけたといえます。
それに比べ、書籍の情報の信憑性の高さが再注目され始めています。 書籍は誰にでも作れるものではありませんし、出版社から発売され、取次を介し、書店が自信を持って売っているという信頼感は他のどの媒体にも劣りません。 これだけネット書店が普及しているにも関わらず、毎日書店には多くの人が訪れています。 書店に足を運ぶ人が絶えないのも、書店の需要が絶えていないことを表しているといえるでしょう。
そのため、書店は、知的好奇心の強い人が多く集まる文化発信地という側面を持っています。 情報を求めてくる人が多いため、何かを伝えたい気持ちがある人にはもってこいの環境です。 そのため経営者は、書店を情報収集の場としてはもちろん、情報発信の場として捉え直す必要があります。
そこで、ここでは経営者がどのように書店を活用すべきか、情報収集・情報発信の2つの観点からご紹介していきます。
経営者の書店活用法①情報収集
社会の動向・時代のキーワードを掴む ジャーナリストの池上彰さんも、書店を活用している一人です。
池上さんがまず立ち寄るのは、ノンフィクションの新刊コーナーだといいます。 さまざまなジャンルがありますが、そのタイトルを見れば、世の中の現状が見えてくるのです。 そして、“毎日”行くという点もポイントです。 書店では、一週間を目安に店頭に並べられた本が売れているかどうか見極め、多くの本がそのまま棚に移動してしまいます。 そのため、週末にのみ行くとしたならば、その間の一週間に数多くの新刊が棚に移動され、新刊から世の中の現状を確認することが難しくなってしまうのです。
最新のトレンドを掴む インターネットでは、利用者別のおすすめやランキングが日々自動で算出されています。 一方、面で広くトレンドを掴めるのが書店の魅力です。 前項で述べたような社会の動向のほかにも、今世間では何が流行っているのか、例えばファッションや芸能人、言葉や文化など、書店は最新のトレンドの宝庫なのです。 中には、「キャリアチェンジを考えているとき、これから伸びそうな分野を書店でリサーチした」という人もいるほどです。 一見自分には関係のないジャンルのトレンドも、情報として蓄えておけばいつか何かと結びつき、役に立つかもしれません。
アイデアのヒントを得る 大型書店の一つである東京・八重洲ブックセンターの書店員によれば、情報番組製作会社が「ネタに困ったとき、書店の一番上から下の階まで全部見て回ると、いくつかひらめきがある」と話していたそうです。
インターネットで検索をするのが一番手っ取り早い方法ではありますが、その場合、検索ワードは自分の思いつくキーワードの範囲にとどまってしまいます。 一方、書店に足を運んで書籍のタイトルを眺めていると、そのタイトルからだけでも、想像がつかなかった発想ができるのです。 パソコンと長時間にらめっこしているよりも、書店内を散策しながら考えるほうが、良いアイデアが浮かんでくるのではないでしょうか。
さらに、ダイヤモンド社書籍編集局第三編集部編集長である和田史子さんは、「棚に並ぶ本のタイトルを眺めているうち、自分の抱える課題が具体的になっていく」と話しています。ここに挙げた目的で情報収集を行う中で、和田さんのように自らの課題が見えてくるかもしれません。 書店で情報収集をすれば、インターネットで検索をするのと同じ時間で、より多くの成果を得ることができるのです。
経営者の書店活用法②情報発信
書店で情報を発信できるのは、小説家や著名人だけだと思っていませんか? そんなことはありません。経営者が書店を活用して情報発信をする方法をご紹介します。
イベント・セミナーを開催する 八重洲ブックセンターでは、有料で宣伝協力を行っています。 書店に来る人々は、「読む」モードになっており、ポスターやチラシなどにも目がとまりやすいようです。 実際に、掲示したポスターの誤字脱字などを素早く見つけて指摘されたこともあるそうです。
八重洲ブックセンターだけでなく、蔦屋書店など、イベント・セミナーなどのスペースを貸出している書店は少なくありません。 書店を情報発信地と捉えてイベント・セミナーを開催することで、知的好奇心の高い人々に情報を発信、さらには自社の知名度アップを図ることができるでしょう。
書籍を出版する 自社、または自分で書籍を出版することもできます。出版方法にはいくつか選択肢があります。
・自費出版 自分で費用を出して出版する方法。書籍制作の主導権を握り、自由にコンテンツを制作することができる反面、他の方法に比べて流通ルートや販売部数を確保するのが難しい。
・商業出版 出版社が費用を負担して出版する方法。著者は印税を受け取ることができる。だたし、出版社が売れると思える企画・著者でなければ、なかなか書店に並べてもらうことができない可能性が高い。
・企業出版 ブランディング出版・カスタム出版ともいう。自費出版が自分の原稿を書籍として形に残すことが目的であるのに対し、企業の課題解決に特化している。費用は企業側が負担する反面、プロの編集者・ライターが制作に携わり、その出版社の流通網によって大型書店にも配本することが可能である。
ビジネス書においては、出版実績の有無に関わらず、毎年大きく販売部数を伸ばしている書籍が多く存在します。 特に企業出版では、ターゲット分析を十分に行うことにより、戦略的にターゲットに届けることが可能です。 今まであまり知られてこなかった方法ですが、最近では経営者の間でも、新たな情報発信の手段としてひそかに評判が広がってきています。
おわりに
経営者は、常に情報に敏感でなければなりません。 情報を収集し、発信し、インプットとアウトプットを繰り返すことで、その感度は上がっていきます。 ここでご紹介したように、書店は情報収集の場としても発信の場としても、経営者の大きな味方であり続けています。 これらの活用術を参考に、経営者としての視点で、改めて書店を見渡してみてはいかがでしょうか。
- 【無料ダウンロード】> 企業出版成功事例集ダウンロード
- 【企業出版】> 経営者が本を出版するべき5つの理由