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ひとりの時代から読むマーケティング施策

著者:GMCブランド戦略室

2017年1月1日。日経MJの表紙「ピンの時代」

正月に相応しいその金色の文字は、めでたいのか、めでたくないのか、漠とした思いを抱えながら記事を読みました。

かく言う私も、人付き合いが得意ではなく、独りでいる時が気楽ではあるし、ひとり焼き肉やクリスマスのカップル入店拒否、一人カラオケ、クラウドソーシングでの一人仕事など、むしろ世間が歓迎している部分があります。結婚したくない20代が2008年の10.1%から2015年の17.8%に拡大(国立青少年教育振興機構)したことを見ても、この傾向は止められないでしょう。

枠組みの流動化が始まったひと昔前

『考える力が身につく社会学入門(中経出版)』によると、ひと昔前の2010年頃は、伝統的な人間関係の枠組みや会社の終身雇用の終了、あらゆる枠組みが崩壊し、流動化していく時代にある中で、組織の枠組みによらない自身の確立が必要になった結果、
自らのキャラを立てる、自分探しの旅や自己分析、スピリチュアルや占いブーム、身に着けているブランド商品によって個人を主張する社会などといった、半強制的に自分が何者なのか探し出さなければならない社会だったといいます。

しかし、現在においてこれら自分探しや自己分析というキーワードに対して、逆に否定的な意見が散見されます。

ネット情報から枠組みを選んでいく現代

ここ数年の大きな違いといえば、スマートフォンの普及と、それに伴うSNS(ソーシャルネットワーク)の発展にあります。 以前よりインターネットは普及していましたが、スマートフォンは人のネットの接触時間を著しく増加させ、「これが流行」「こうしなければならない」といったマスメディア主導の情報から解放されることにより、玉石混交のあらゆる意見の中から自分に都合の良い情報だけを選び取ることが可能になりました。昨今のグローバリズムの崩壊と、ナショナリズムの再興もこの流れの中から生まれた結果のように思いますが、

この流れによって、個々人の意見が世間と異なっていても孤立しなくなり、無理に自分探しや結婚をせずとも、友達がいなくてもよいと考えるようになり、
さらに、会社や家族の枠組みも流動化しているため、父や母はこうあるべき、といった役割像が不明確なため、子供も親も多様に個々の活動を行う、ピンの時代の到来になったと考えます。

とはいえ、見たくない情報も当然入ってきますし、社会的役割が全く無くなるわけでもないため、不安定な状態に変わりはありません。

アイデンティティ

精神分析学者で、心理社会的発達理論を提唱したエリクソン(1994年没)は、人が社会の中で自分が何者なのか追い求める「アイデンティティ」のライフサイクル論を提唱しました。

集団や社会の中で明確なアイデンティティ(自己同一性)を確立できない場合、不安や無気力を感じる危険性が高くなる。ということです。

もちろん、当時のアメリカと現在の日本の状況は異なり、あらゆる枠組みが崩壊している現代において、全てあてはまるわけではありませんが、アイデンティティが確立できない状態に不安感を覚えるのは、想像に難くありません。

また、人の成長過程によって達成しておかなければならない課題があるとも提唱しており、例えば、20〜39歳の初期成年期では「親密性と孤独」を課題としており、現代では、この不安感から逃れるためにインターネットを使った投稿によって補完していると考えられます。

社会的背景から考える力を

このように考えると、企業が商品の情報を拡散させ、口コミを増やしたいと考える場合、単純に自社ブランドとの関係性だけではなく、ターゲットとなる人物が、どのような時代の、どの成長過程にあるのかを想像することによって、より具体的なペルソナ像を描くことが可能になるのではないでしょうか。

様々なマーケティング手法が開発され、自動化していく現代にあって、社会的背景の把握と知識から考える力を養うことは、ますます重要になると考えます。

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