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富裕層マーケティングとは? 成功の秘訣と併せて徹底解説

著者:幻冬舎メディアコンサルティング 編集局・部長 伊藤英紀

富裕層の世帯数と保有資産額は上昇を続けており、富裕層ビジネスにとっては追い風が吹いている、ともいえる状況です。しかし、実際に富裕層向けのマーケティングに成功している企業は多くありません。その理由はさまざまですが、一つには富裕層に対する理解の不足があります。今回は、富裕層への理解を深めながら、効果的な富裕層マーケティングの方法を探っていきます。

富裕層マーケティングとは?

富裕層マーケティングとは、富裕層をターゲットにしたマーケティングのことです。では、富裕層とはどのような人々を指すのでしょうか。

富裕層は簡単に言えば「お金持ち」のことですが、マーケティングの世界では保有する「純金融資産額」を基準にして階層を分けます。これは保有する現金・預貯金・株式・債券・投資信託などの金融資産から負債を差し引いたものです。要するに「使おうと思えば(すぐに現金化して)使えるお金」の量を指します。

どのレベルを富裕層と定義するかは目的に応じてさまざまですが、たとえば野村総合研究所の2019年のレポートでは、純金融資産額が1億円以上5億円未満の人を富裕層、5億円以上の人を超富裕層と分類しています。

レポートの推計によると、国内総世帯数5402.3万のうち、富裕層は124万世帯、超富裕層は8.7万世帯です。そして、純金融資産の国内総額1554兆円のうち、富裕層の保有額は236兆円、超富裕層の保有額は97兆円に上ります。

富裕層と超富裕層を合わせた約2.46%の世帯に、国内の金融資産の約21.4%が集中していることになります。この2.46%が富裕層マーケティングのターゲットとなる「富裕層」です(ただし、後述のとおり富裕層と超富裕層を同じように扱うわけにはいきません)。

富裕層・超富裕層の世帯数と資産額は、アベノミクスが開始された2013年以降一貫して増加しており、コロナ禍も(景気対策のおかげで)富裕層にとってはプラスに働いていると指摘されます。こうした傾向は富裕層マーケティングにとっても順風として働いています。

中国人をはじめとする訪日外国人のインバウンド消費も、富裕層マーケティングにとって大きな鍵となります(ただしこちらはコロナ禍が逆風となっているところです)。

富裕層の行動傾向

一口に富裕層といっても多種多様な性格・趣味・考え方を持つ人がおり、そうした個人的な側面を考慮することもマーケティングには欠かせません。とはいえ、富裕層によく見られる行動傾向や生活パターンを指摘することも可能で、それらを把握しておくことは有用です。

富裕層は「どのようにして富裕層に属するようになったか」という点で2つのタイプに分けることができます。1つは「自分の代で(もしくは親と自分の代で)富を築いた」人で、もう1つは「生まれたときから富に囲まれている」人です。一般的に、超富裕層は後者のタイプからなり、一代で超富裕層になれるのは、上場まで漕ぎ付けた創業経営者か一流プロスポーツ選手などの例外的な人に限られます。

この2つのタイプにはそれぞれ特有の行動傾向があるといわれています。

①自分の代で富を築いた人の行動傾向

このタイプは富裕層に至る階段を自分の脚で登ってきて、今もさらに上を目指して登り続けている人が大半です。そのため、自分というブランドを高めようとする意識が強く、派手な消費を好む傾向が見られます。

資産の形成方法や運用方法、富の消費スタイルについても自分で身につけた人が多く、何にどうお金を使うかを自分で調べ、考え、自分の感覚として納得したものに投資するという傾向があります。裏を返せば、プッシュ型の営業は忌避されやすいということです。

その一方で、各分野の専門家など知的ステータスの高い人物に対しては(信頼に値する人物だと自ら判断すれば)大きな信を置く傾向があります。

また、同じように富裕層に属する人々も相談相手として適しており、消費行動を互いに惹起しあう関係にあります。

②生まれたときから富に囲まれている人の行動傾向

このタイプの人は、富の扱い方についても物心ついたときから自然と吸収しています。自分なりに資産形成を考える場合にも、そのための地盤が初めから与えられており、周囲に好適な相談役が存在しています。営業のために接触してくる相手も、世間に名の通った信頼できる会社が大半です。

そうした環境のなか、このタイプの人はあえて自分を大きく見せる必要もなく、むしろ資産を安定して運用しようとする傾向があります。

また、公私ともに閉じたサークルのなかで生活しており、消費行動に影響を与える相手も内部の人間であるのが通例です。

富裕層マーケティングのメリット・デメリット

①メリット

全体から見れば少数派である富裕層に大きな富が集中しており、しかも富裕層内部で影響しあう傾向が強いため、マーケティングが成功すれば非常に大きな見返りがあります。

富裕層の間で評価された商品は一般層にとっては憧れの対象となるため、消費が富裕層の外にまで波及します。また、富裕層向けの商品はグローバルな展開が期待でき、欧米でも評価されればその評判が逆輸入の形で日本に返り、消費を焚きつけることになります。

②デメリット

ターゲットが狭く、閉じた関係を形成している場合が多いため、効果的なアプローチを見いだして有望なリードを獲得することは容易ではありません。また、マーケティングの効果が得られるとしても時間がかかる傾向があります。

成功のポイント

①ターゲットの明確化・細分化

上記のとおり、自分で富を築いた富裕層と生まれたときから富に囲まれて生活している富裕層では消費行動に大きな違いがあり、正反対の傾向を示す面もあります(顕示的な消費を好むかどうかなど)。したがって、富裕層のどのタイプをターゲットにするのかを明確にし、ターゲットに即したマーケティングを行う必要があります。

保有する金融資産額でターゲットを分ける場合、特別リッチな層(超富裕層)は基本的には親の代からリッチである人たちだと考えられます。それより下の一般の富裕層には両方のタイプが含まれますが、大掴みに捉えるならば、自分で富を築いた層と見なしてよいでしょう。

さらに、いずれのタイプの富裕層にも多種多様な人がいるため、タイプ別の傾向をベースにしつつも、具体的な職業や地位、ライフスタイルなどを想定した条件も掛けあわせ、ターゲットを細分化することが重要です。

②信頼できる情報源を用いたプル型マーケティング

富裕層のリードを獲得するための重要な鍵となるのが、プル型のマーケティング手法と情報の信頼性です。

自分の代で富を築いたタイプは押しの営業を嫌い、自分で調べ、自分で考えることを好みます。したがって、プル型のマーケティングが適しています。プル型の媒体は閉鎖性の強い超富裕層からのアクセスも期待できます。

さらに、富裕層が信頼感を抱き傾聴に値すると判断するような情報をマーケティングツールに落とし込んでいきます。これを用いて有望なリードが獲得できれば、ツテを通して富裕層内に効果が波及することが期待できます。

プル型の情報媒体ツールとして代表的なのが、富裕層向けメディアへの公告出稿、インターネット上のオウンドメディアの運営、そして企業出版です。特に企業出版は社会的な信頼性や知的ステータスという点で優れており、富裕層のリード獲得には最適と言えます。

成功事例

アンティークコイン事業や経営コンサルティング事業を展開するトレーディングリブラは、日本初のアンティークコインネットショップを運営するなど、日本におけるアンティークコイン投資を先導してきた会社です。

しかし、欧米に比べて日本では投資対象としてのアンティークコインの認知度が低く、思うように富裕層のリードを獲得することができずにいました。そこで同社は、「資産を守り増やす」のに効果的なアンティークコイン投資の知識を広めることを目指し、富裕層をターゲットにした書籍『超富裕層だけが知る資産防衛の裏ワザ アンティークコイン投資』を出版しました。

これによりアンティークコイン投資と同社に対する認知度は上昇し、同社が開催するセミナーとの相乗効果も生まれて、富裕層に加えて一般層の顧客も増える結果となりました。

<参考文献>
野村総合研究所、日本の富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円と推計
https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2020/cc/1221_1
コロナ対策で溢れたマネーは富裕層だけ潤す 「低成長バブル」で際立つ日本の二極化
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2021/03/post-95951.php
新たな富裕層マーケティング ターゲットはマス・アフルーエント
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8199302_po_cs20040803.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
富裕層 概論 なぜ富裕層なのか?
http://abraham-marketing.com/wealth/value/index.html
富裕層マーケティングに失敗しないためのポイントとは?
https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/businesstopics/digitalmarketing/blog/202003.html

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