中小企業経営者の目に見えないところに潜んだ業績低迷の真因

著者:野村 宜功,丸山 直明

2019.09.10

中小企業と大企業では組織構成が異なるため、中小企業がJALや日産の経営改善を見習っても状況を改善することはできません。本コラムでは、中小企業の業績低迷の原因を解決する方法について解説いたします。

目次

大手企業とは勝手が違う「中小企業の経営改善」

経営改善をうたう書籍は世の中に星の数ほどありますが、自社に通用するノウハウを探すのは難しいものです。というのも、業種、業態、規模、そして事業内容によって、経営の内容は少しずつ異なるものですし、メディアに報道される経営改善の事例は大企業のものがほとんどだからです。

例えば、JAL再生や日産のV字回復は、日本のビジネス業界ではいつまでも語られる劇的な経営改善事例ですが、そのノウハウが中小企業でも同じように使えるかといえば、そうでないことのほうが多いでしょう。

リソースの少ない中小企業ではリストラをするのも限度がありますし、そもそも組織構成がまったく違うので「大企業病」とは無縁のことが多いです。京セラやKDDIを設立した稲盛和夫さんが経営者になっても、単純にカネがなくてヒトがいないのだから、ウチの会社はどうにもならないと考える中小企業経営者もいると思います。

確かに、大企業と中小企業とは異なる存在です。例えば、大企業であれば法務や人事の専門職に任せればよい仕事でも、中小企業の場合は誰かが時間を割いてやらねばならないことがあるでしょう。新卒採用活動をしても、中小企業の場合は優秀な学生を大企業に取られがちで、リソースの少なさに泣くこともあります。

このように、中小企業は大企業よりも劣っていることが多いと考えられがちですが、実際はそうでもないのです。例えば、本当に儲かっている中小企業のオーナー社長は、大企業の雇われ社長よりも使える金額が大きいものです。その分、毎日の経営に苦労しているのかといえばそうでもなくて、大企業が参入してこないニッチ市場や、自社開発のオリジナル品などで勝負できている中小企業の場合、ガバナンスが緩くても利益が上がっていることもあります。 大企業の常識は中小企業の非常識であり、その逆もまた真なりです。

日本の企業359万社のうち、中小企業の数は358万社で全体の99.7%を占めています(出典:2019年度版「中小企業白書」)。メディア報道で目立つのは大企業ばかりですが、日本の産業を支えているのは中小企業ですし、中小企業の復活こそが日本の経済の振興につながると信じています。

「自分や自社を良きものだと思うナルシシズム」が経営改善を阻む

経営コンサルタントが支援するのは、経営に問題があるとされる中小企業がほとんどです。もちろん、中小企業のすべてに問題があるわけではありませんが、経営改善の必要がある中小企業と日常的にお付き合いしていると、どうしても中小企業の問題点が目についてしまうものです。

さて、経営に問題があるといっても、そのことを自覚している経営者は多くありません。もし、あなたが「我が社の経営には問題がある」と考えているのであれば、それだけでもよい経営者の資格がありますし、経営改善のスタートラインに立ったようなものです。

人間は、なかなか自分のことを客観的に見ることができません。また、自分や自分の分身である自社に問題があることも、簡単には認めたくないものです。そこにあえて目を向けることが、経営改善の第一歩です。 経営改善を阻む壁の一つは、自分や自社を良きものだと思うナルシシズムです。

では、どのようにすればその壁を打ち破ることができるでしょうか。対処法の一つは、第三者の客観的な意見に耳を傾けることです。コンサルティング会社のお客さまの多くは、金融機関などの外部機関から問題を指摘されて、はじめて対策に着手します。 人はなかなか自分に問題があるとは認めたがらないものですが、生殺与奪を握る金融機関であれば、痛い意見でも耳を貸さないわけにはいきません。

それと同様に、もしあなたに信頼できる相談相手がいるのならば、思いきって経営の問題点を指摘してもらってはいかがですか。もちろん、耳に痛い意見であればあるほど、最初は受け入れがたく感じるものですが、問題について考えてみることが、経営における新しい前進になるかもしれません。

そもそも、本コラムを読んでいる時点で、あなたは何らかの問題や課題を感じているのだと思います。それが例えば「資金が足りない」「社員の能力が低い」「時代が変わってモノが売れない」といった、どこにでもあるような普遍的な悩みであったとしても、その背後にはそれぞれの会社ごとの事情が潜んでいます。

例えば、「営業で顧客を訪問する時間がない」といっても、その原因が「スケジュールの段取りが悪い」のか、「営業マンが足りていない」のか、「無駄・非効率な業務が多い」のか、あるいはそれ以外の原因によるものかによって、対処方法は変わってきます。 表面的な問題ではなく、真の原因を探ることを意識してみてください。

もちろん、何が真の原因かはなかなか見えてこないものです。これが真の原因だと思って、実際にその問題を潰してみても、業績に与える影響が小さかったり、モグラ叩きのように新たな問題が別に出てきたりで、徒労に終わることもあります。なかには、いろいろな問題を見つけて、それを潰してはいるものの、一向に経営改善につながらない企業もあります。 本当に必要なのは、出てくるモグラ(問題)を一つひとつ叩くことではなく、モグラの巣を突き止めてそこから生まれるモグラ(問題)の根を断つことです。

教科書通りの経営・施策だけでは課題解決は不可能

中小企業のオーナー社長といっても、一昔前のようなワンマン社長は最近では少なくなって、客観的な第三者の意見に耳を傾ける若手社長が増えてきています。 とはいえ、中小企業の場合はそれほどリソースに余裕があるわけではありませんから、古い付き合いのある顧問税理士、あるいは経営支援をメニューに持つ税理士法人、中小企業経営支援を掲げた中小コンサルタントなどがその相手になっています。

大企業の場合は、煌びやかなブランド力を持つ外資系の戦略コンサルティング会社などが選択肢に入るのですが、中小企業がそのような会社に依頼するのは難しいでしょう。 それはそれで正解なのです。大企業相手のコンサルティングをメインに行っている会社は、逆に中小企業相手の支援策を持っていませんし、経験も豊富ではありません。中小企業の場合は、中小企業支援に特化した会社に相談するのが間違いのない方法です。

しかし、その相手は選んだほうがよいと思います。というのも、中小企業の場合は、大企業以上にその内実の幅が広く、同業や同規模の会社でのコンサルティングの成功経験を持ったところでないと、的確な助言が受けられないこともあるからです。 例えば、実地経験の少ないコンサルタントの場合、その分析やアドバイスが教科書的な理論に偏り過ぎていて、現実にはあまり有効ではないこともあります。 誤解のないように言っておきますが、教科書的な理論が良くないと言っているわけではありません。米国でMBAや中小企業診断士の資格を取得する過程で身につけたビジネス理論に助けられることは、何度もあります。

しかし、実際に経営コンサルティングの現場に入ってみると「これは教科書通りの対応でうまくいった」という場面と、「これは教科書通りにはいかなかった」という場面が交互に現れてきます。理論はあくまでも理論で、実地で有効に使うためには臨機応変な対応やアレンジメントが必要なのです。 特に気をつけなければいけないのは、理論が大企業寄りだったり、アカデミズムやアメリカの企業寄りだったり、時代が古過ぎたり、著者の経験に依存し過ぎていたりするケースです。

21世紀の日本の中小企業において、業種の特性、日本市場の特性、日本人の働き方、日本社会の現状などが、経営をするうえでの大きな要素となってきます。 もちろん、経営には普遍性もあります。経営学の巨人と称されたP・F・ドラッカーの言葉が今でも色あせないように、あるいは「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助や稲盛和夫から学べることが少なくないように、いつの時代であっても力を持つ格言はあります。

ただし、それらの言葉はあまりにも抽象的、精神論的であるため、モチベーションを高めることの役には立っても、実際の細かな経営課題の解決にはならないことがあります。 例えば、ドラッカーは「ビジネスの目的は顧客をつくり出すことである」と言っていて、それ自体はまったく正しいことなのですが、そのために何をどうすべきかについては教えてくれません。顧客が十分にいても客単価が少ないケースもありますし、そもそも新規顧客の創造ができないようなニッチ市場のケースもあります。だからでしょうか、アメリカのビジネススクールのMBAクラスでは、ドラッカーについて教わることはほとんどありませんでした。原理原則や精神論だけでは、実際の経営改善はできないのです。

理論の欠如も問題です。中小企業向けのビジネス本は、いくつかの事業で成功を収めた著者が自らの経験から編み出した法則を語るものが多く、それらには教科書的な理論の裏付けが欠けています。同時代の同規模の同業種であればうまくいくのかもしれませんが、別の時代、別の業種で本当に成功できるのか疑問が残るものもあります。 「抽象論ではなく具体論での経営改善」が、いまの日本の中小企業には必要だと思います。

こちらのコンテンツは書籍『1年で結果を出す経営改善のツボ』から抜粋しております。

こちらのコンテンツはこの書籍から抜粋しております。

書籍名:1年で結果を出す 経営改善のツボ 著者:野村 宜功,丸山 直明

野村 宜功
SQコンサルティング株式会社代表取締役
一橋大学法学部卒。2009年SQコンサルティング株式会社を設立。著書に『本当に強い会社を作るための新常識』(東洋経済新報社)がある。

丸山 直明
SQコンサルティング株式会社シニアマネージャー
同志社大学経済学部卒。中小企業診断士、事業承継士。
ココだったのか! 自社の“真の問題点"を突き止めれば、1年で経営を立て直せる悩める中小企業経営者必読の書

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