「出版不況」に直面する書店が、なぜ今もビルや商業施設から「必要とされている」のか

著者:GMCブランド戦略室

2019.10.04

「出版不況」という言葉が使われるようになって20年以上になります。実際、紙の出版物の市場規模は1996年をピークに下がり続けています。しかし、そうしたなかでも大規模なビルや商業施設の中には必ずといっていいほど書店が入っています。 なぜ、商業施設のディベロッパーは書店をテナントとして求めているのでしょうか。

目次

書店は情報収集欲求が強い人を自然と呼び込む

いまはスマートフォン一つあれば、インターネットで膨大な情報にアクセスできる時代になりました。にもかかわらず、今日も書店に多くの人が足を運んでいます。

時間つぶしのために書店に立ち寄るという人もいるでしょう。待ち合わせに書店を利用する人もいるかもしれません。しかし多くの人は、情報収集への強い欲求を持って書店を訪れます。

インターネット全盛のこの時代に、なぜ人々はアナログな媒体である「書籍」を求めて人々は書店に向かうのでしょうか。

理由の一つが、「テーマについての情報の多さ、コンテンツの深さ」です。確かにインターネット上には膨大な情報があります。しかし、一つひとつのコンテンツはそれほど長くありません。5,000字あるコンテンツなら長いほうで、1,000字に満たないものも少なくありません。

文字数が少なく、短い時間で手軽に読める。これが、現在のウェブコンテンツの主流です。

これと正反対の性格を持っているのが、書籍です。書籍によっても異なりますが、だいたい200ページの単行本なら約10万字前後のコンテンツが入っています。これだけの量の情報が、タイトルに端的に表されている一つのテーマについてまとめられているのです。

ある世界のプロフェッショナルが、自分の専門分野に関して持っている知見はたった1,000字、2,000字といった分量では到底語りきることはできません。通常であれば数万字といった分量を必要とするものです。そのような数万字、もしくは10万字を超えるコンテンツをパッケージしたのが、書籍というメディアです。つまり、ほとんどのウェブコンテンツでは得ることができない深い知見や経験、または思想に触れられるのが書籍なのです。

このような特性を持った書籍が、中型書店では数十万冊、大型書店では100万冊を超える書籍が置かれています。自分が興味のあるジャンルのコーナーに行けば、数百、数千の関連書籍が書棚に並んでいるのです。そして、それぞれの書籍がインターネットでは得られない情報を内包しています。だから情報収集欲求が強い人は、書店に引きつけられずにはいられないのです。

書店は、客の滞在時間が長い店舗として知られています。短くても数十分、長ければ数時間かけて書籍や雑誌を選ぶ人も珍しくありません。滞在時間が長いため、書店を訪れたあとは休憩のためにカフェに寄る、あるいは空腹を覚えてレストランに行くといった行動が予測できます。

また、書籍の価格は文庫本で800円前後、単行本でも1,000円台のものが多く、一冊購入してもほかの商品の購買余力が残ります。ほかのショップに寄り、買い物をして帰るという行動も期待されます。

情報収集の欲求が強い人々が集まり、ほかのテナントへの波及効果が期待できる……それがビルや商業施設から書店が求められる理由の一つなのです。

信頼性ある情報を求める人は書店に向かう

書店に人が集まる理由として「書籍に対する信頼性」もあります。

書籍は、著者となっている専門家が自分の名前を出して公に出版しているものです。いい加減な内容のものを出すと自分の名前に傷がつくことになります。また、アップしたあとにも変更がきくウェブコンテンツと異なり、一度書籍という形になると修正ができません。著者、出版社が原稿を精査し、専門家が校正・校閲を行ったうえで書籍は刊行されます。

ウェブコンテンツより厳しい過程を経て世に出されているため、人々は書籍に高い信頼を寄せています。精度の高い情報を切実に求めるとき、人々は書店に向かいます。

たとえば、「命・健康」に関する情報が欲しいとき。家族が大きな病気にかかったら、まずインターネットで病気に関する知識や治療法などを調べるかもしれません。しかしウェブコンテンツには信頼のおけない情報も混ざっています。ほとんどの人はインターネットリサーチだけで済まさないでしょう。だから情報を求め書店に向かいます。

また、信頼性の高い情報を必要とするのが「お金」についてです。お金に関しては、インターネット上に怪しげな情報がゴロゴロ転がっています。家を買う、あるいは投資をするといった大きな額のお金を動かすとき、ウェブコンテンツだけに頼るのは不安です。書籍の情報を必要とします。

例に出した「命・健康・お金」に関する書籍は出版不況で売上が落ちていないジャンルです。ようするに精度の高い情報を得たい場合に書籍を頼る人々が多いのです。

近年、書店の来店人数も減少傾向にありますが、書店に行かなくなっているのははっきりした目的なく、何となく書店を訪れていた人たち。精度の高い情報を得たいなど、明確なニーズを持っている人は書店を利用しています。

発信力の高い書店来訪者が施設の価値を高める

書店には、一つのテーマについて多くの情報を得ようとする、あるいは精度の高い情報を得ようとする、情報感度が高い人が集まります。単に流れている情報を受け取るだけではありません。情報を吟味し、自ら動いて質の高い情報を得ようとします。

そのように情報感度が高い人たちは、ブログやSNSでの情報発信にも積極的だと考えられます。ビルや商業施設のディベロッパーは、書店に足を運ぶ人たちのこうした属性にも注目しています。

「今日行ったこの商業施設は店舗が充実している」あるいは、「今日このビルの書店に行ってこの書籍を買ったが非常に面白い」……そうしたブロガーやSNS利用者による発信が、自分たちの施設の紹介になり、施設の価値を高めることになると考えているのです。

ウェブコンテンツにはない多くの情報が詰まっており、情報の信頼度が高い「書籍」を求めて、人々は書店に引きつけられます。だからこそスマートフォンで簡単に情報が得られる今でも、書店は確かな集客力を持っています。

ビルや商業施設の書店を訪れた人たちが、同じ建物のなかにあるほかのショップ、レストランを利用する。また、ブログやSNSでその経験を発信するので、ビル、商業施設のプロモーションにつながる……それが、出版不況といわれるなかでも、商業施設のディベロッパーが書店を魅力的なテナントとして求める理由なのです。

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