【連載第3回】価格競争から脱却せよ! 差別化を実現する企業ブランディングの成功法則

著者:細田 悦弘

2019.10.10

ブランディングの重要性は理解していても、ブランドに対する理解が明確になっていないため、有効なブランディングができていないケースが珍しくありません。今回は、ブランドという概念への考察から、現代に必要とされているブランディングを考えていきます。

目次

企業の規模・業種・業態を問わず、生き残り戦略の最後の切り札! 企業ブランドとは

ブランドといえば? 私が開いているブランド講座でこのように質問すると、たいてい欧州の高級ブランドの名前が返ってきます。 それでは、いったいブランドとは何なのでしょうか。端的にいえば、選ばれる特別な理由をもった商品/企業が「ブランド」で、そのロゴマークや商標がシンボルということになります。強いブランドは、そのシンボルマークを見た途端に「ああ、あれか」と認識でき、そのブランドならではのベネフィット(ご利益)やある種の風景・世界観を思い浮かべることができます。“企業や商品・サービスが提供する体験の価値”と“わかりやすい識別記号”がセットになったものがブランドという概念です。

消費者が商品やサービスを選ぶとき、「あるポイントで、何らかの理由により購入する」ことになります。ブランドは、この選択を後押しするものです。今、ITの急速な進展により商品・サービスの選択の幅が広がっており、企業間の競争が激しくなっています。商品・サービスの選択を後押しするブランドは、規模の大小・業種・形態に関わらず、企業の生き残り戦略の最後の切り札として考えられるものです。

体系的に知る「ブランド」の昔と今

「ブランド」という考え方は80年代半ばから盛んになってきましたが、以前からブランドやブランディングという言葉は使われていました。ここで、ブランドの変遷を押さえておきましょう。 50年代後半から60年代後半にかけて岩戸景気、オリンピック景気、いざなぎ景気と好景気が続き、消費ブームによって家電や自動車などが広く普及しました。その一方、技術の進歩で商品がコモディティ化し、企業イメージで差別化する戦略が多用されました。いいCFを創るために海外ロケに出かけ、有名カメラマンを起用し、人気の外国人タレントをキャスティングするといったように、広告キャンペーン主導型のイメージアップが定番とされた時代です。

70年代に入ると、石油危機により高度経済成長は終わりを告げ、欠陥商品や贈収賄などの企業の不当行為が露呈し、大企業に対する信認が大きく揺らぎました。そして「企業の社会的責任」という概念が意識され始めます。 そこで、もう少しブランドの中身、実体をしっかりさせて、ブランドの価値を総合的に上げていこうという考え方が芽生えてきます。しかしこのころは飛躍的な技術革新によって商品・サービスの差別化が困難で、売れる仕組みをサポートする広告・マーケティング視点でのコミュニケーションが主体でした。

80年代に入ると、CI(Corporate Identity)が企業の経営戦略として社会現象といえるまでに注目されました。ところが、多くの企業が他社との差別化のためビジュアル面にばかり注目し、企業の見た目をリフレッシュして統一感を持たせることが主目的になってしまいました。これが「CIはお金がかかる」「表層的」といった印象を持たれ、ブームとして語られる一因です。

ブランディングは「実体」がなければ意味がない理由

このような歴史を経て今、ブランド戦略は「企業の実体」を基軸にステークホルダーからの支持獲得を図る戦略としてとらえられるようになりました。

そこで重要なのが、ブランド・アイデンティティー(らしさ)です。ブランド・アイデンティティーとはブランドの基本コンセプト、すなわち企業が顧客をはじめとするステークホルダーの頭や心の中に何を築きたいのか、どんな約束をしたいのか、ということです。 具体的には、

  • ブランドの根源的な拠り所となる「フィロソフィー(哲学)」
  • そのブランドが顧客や社会に提供していく「ベネフィット(恩恵)」
  • そのベネフィットを提供できる根拠や裏付けとなる「提供能力(持ち味、お家芸)」「パーソナリティ(個性・社風)」

が構成要素となります。

ブランド戦略というとロゴやデザイン、コミュニケーション活動を思い起こす人も多いのですが、その作業の半分ほどはこのブランド・アイデンティティーをつくる(かためる)ことにあり、またそれを社内に浸透させることにあります。

現代社会の価値観に合った「企業ブランディング」の築き方

現代社会では「サステナビリティ(持続可能性)」が共通の価値観となっています。サステナビリティ時代において、ブランド・アイデンティティーのなかでステークホルダーに約束すべき必須のファクターはなんでしょうか。それは、「社会性」です。社会に資するミッション・ビジョンのもとに共有された価値提供を軸に、顧客をはじめとするステークホルダーを引き寄せ、信頼と愛着につなげていくのが現代社会では重要です。

このアプローチは「商品・サービス」の競争力を高めるだけではありません。顧客は、商品がコモディティ化するなかで、「社会性」を組み入れた価値に新たなニーズを抱くと同時に、その企業の想いや姿勢を評価します。 すると次の段階では、「商品が同じようなものであれば、この企業のものを買おう」と、個別商品だけでなく、その企業の商品全般を支持するようになります。

これこそが企業のブランド力の真骨頂であり、エンドースメント効果といいます。エンドースメントとは、企業ブランド(親ブランド)が商品ブランド(子ブランド)に保証を与えるという意味です。「同じような商品なら、この会社のものだったら間違いない」という判断をしてもらえるということです。 現代社会の価値観に合ったブランディングには、この「社会性」を組み込んだブランド・アイデンティティーを構築するのが近道です。

現代では「サステナビリティ」を目指した「社会性」を組み込むことが重要ですが、時代は常に移り変わり、それとともに顧客・生活者のニーズや価値観も常に変化します。ブランドの価値観や美意識も、万古不易の部分とともに時代の変化にしなやかに対応する部分が同居することが肝要です。ブランドは、常に磨き続けなければすぐに輝きを失い、顧客・生活者にとって魅力的ではなくなってしまいます。時代の変化に対応し、ブランドに“時代性”を備えることが大切です。

(こちらのコンテンツは書籍『選ばれ続ける会社とは 〜サステナビリティ時代の企業ブランディング』から抜粋しています)

こちらのコンテンツはこの書籍から抜粋しております。

書籍名:選ばれ続ける会社とは 〜サステナビリティ時代の企業ブランディング 著者:細田 悦弘

細田 悦弘
中央大学大学院 戦略経営研究科 フェロー / 一般社団法人日本能率協会 主任講師
1957年、愛知県生まれ。中央大学法学部卒業後、キヤノンマーケティングジャパン(株)入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、同社・CSR本部に所属しながら、企業や大学での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。

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