前例踏襲型の課題解決に囚われている企業は淘汰される

【連載第2回】足で稼ぐ法人営業は時代遅れ! プッシュ型営業に頼る企業が抱える4つの問題点

営業マンが顧客の元に足を運び商談をするモデルは時代遅れ。本コラムでは安定した受注を取れる新しい営業組織をつくるために見直すべき4つの問題点「個人頼りの営業」「新人が育たない環境」「営業マンの能力の格差」「目先の利益にとらわれることで起こる悪循環」について解説いたします。

問題点①受注が安定しない 個人の能力頼りになり、売れる組織が成り立たない



かつての営業現場では、こんな場面すらよく見られた。営業会議に営業マンが集まると、みな自分の手帳に顧客情報を書いて持っている。その手帳は手で囲って絶対に仲間には見せないようにする。

「今月はあと1,000万円足りないんだ。A君どうにかならないか」 「いや、ぼくはもう今月ノルマに達成していますからね。ちょっと無理ですよ」 「そんなこと言ってないで、なんとかやってよ」 「しょうがないですね、じゃあ300万円でいいですか」

自分の顧客情報は自分しか把握しておらず、同僚も上司さえも知らないというほど、秘密主義が繰り広げられていた。営業としての存在価値を維持したい、社内的地位を維持したいという思いから、そうなってしまうのである。

自分ですべてを管理し、売れるも売れないも自分の責任だ。売れれば給料は大きく跳ね上がるし、売れなければジリ貧になる。外資であれば最大で2倍ほど、国内企業でも1.5倍ほどの給与差が生じる。

営業マンが評価される指標は、「営業成績」だけである。つまり「どれだけ売ったか」、それしか判断基準がない。しかも毎日成果が求められ、たとえ新入社員であっても「成長するまで待ってください」などとは口が割けても言えない。

その割に、戦う武器は極めて脆弱だ。管理者がほかの方法を知らないために、顧客を獲得するには「とにかくアポイントを取れ」「足しげく通え」と号令をかける。しかも手当たり次第に実行するから非効率このうえない。「取れるまでやれ」が常態化し、取れなければ取れるまで、終電間際まで仕事する。

問題点②新人が育たない 「気合い、根性、経験」で出世した上司の教えが、新人の成長を妨げる



最終的な数字のみがすべての判断基準であり、「どこをどのように改善せよ」といった管理者からの具体的アドバイスもない。体育会的な精神論で「頑張れ。とにかくやれ」と号令をかけるだけに終わっている。そのため営業職は、「気合、根性、経験」で乗り切れとハッパをかけられる、「3K」がまかり通る職種といわれるようになった。かつて3Kといえば、「危険、汚い、きつい」だったものが、いまや「気合、根性、経験」の営業として、若者にも年々人気が落ちる傾向にあるのだ。

管理者自身が「気合、根性、経験」で出世した人であるだけに、自分の成功パターンを他人にも押しつけ、「オレにできたんだから、お前たちにもできるはずだ」と持論を展開する。また、そういった営業手法を否定することは、その人自身を否定することにつながるため、若手営業マンはうっかり営業改革など口には出せない。

しかし、時代は変わったのだ。発掘などせずともニーズがあり、つくれば売れる、売れば儲かるという社会ではもはやない。ところが営業手法はいまだに属人的で、個人の能力に多くを依存し、各営業マンの限度を超えた頑張りでようやく成り立っている。いや、もはや成り立たなくなりつつある、 このまま3K状態が続けば、営業職に夢が描けず、優秀な人材が集まらないばかりか、営業マンの質の底上げもままならない状況が繰り返されることになるだろう。

問題点③成績不振の社員が増える 2割の「できる営業マン」は疲弊し、8割の「できない営業マン」は売れぬまま



ビジネスの世界では「2対8の法則」というのがよくいわれる。この法則の出所は諸説あり、経済学者が「ある国の20%の富裕層がその国の総資産額の80%を占めている」と述べ、動物学者が「働きアリのうち20%はあまり働いておらず、その20%を除いた残り80%のなかでも、20%がやがて働かなくなる」などというように、さまざまな場面で用いられる。

多くの企業で、3Kを克服した営業成績の良い2割の営業マンが、全体の8割の売上げを挙げている。顧客も既存が8割、新規が2割である。さらに既存顧客のなかでも、2割の重要顧客が既存顧客全体の8割を稼いでいる。どこまで行っても不思議と2対8の法則が当てはまるのだ。

そうしたなかで、営業部門に「仕事の偏在」が起こっている。現場の疲弊は、実はこの「仕事の偏在」に起因するのだ。これは永遠の課題なのかもしれないが、数字を残せる「できる営業」は優良な案件を任されるようになり、成約確度が高いためどんどん売れる。成績がいいのでまた優良顧客を任され、さらに売れる。当然、担当する顧客の数はますます増え、顧客対応にも相当のエネルギーを消耗していく。そうして「できる営業」はどんどん忙しくなるのである。

ふと気づくと、「なんで自分だけこんなに忙しいのか」と不満が募ってきて、いつまでも解消されない職場環境に耐えかね、辞めていってしまう。現場の雇用は流動化し、とりわけ若年層の間では転職することはごく当たり前になってきている。下手をすると会社は顧客そのものを失ってしまうという事態も予測される。

一方、「そうでない営業」として烙印を押された者は、研修ばかり参加させられたり、可能性の低い顧客を任されたりする。モチベーションも上がらず悪循環になる。結果、総合的に「そうでない営業」として本人も周囲も固定した評価を下すようになる。

このように、優秀な2割の営業マンは疲弊していつかいなくなるかもしれないし、8割はいつまで経っても育たないということが長く続いてきた。しかし、それでもなんとか会社が継続してこられたのは、やはり世の中全体が成長していたからだ。その成長下でこの現場の歪みが見えなかった、見ようとしなかったのである。

しかし、いつまでもこれでは続かない。今は我慢しているかもしれないが、優秀な人材ほど自分の能力を高く買ってくれる会社にならば、移ってもいいと考える人が多くなってきている。優秀な営業を失ってからでは遅いのだ。「そうでない営業」をそのままにすることもこの厳しい環境下、許されることではない。やはりこの点からも営業改革は不可避である。

問題点④組織の成長が止まる 目先の売上げに追われ続け、抜本的な営業現場の改革ができない



営業現場、営業形態が旧態依然であることに加えて、課題として認識しておくべきことがある。新規顧客開拓の仕組みを確立していない企業が多く見受けられるということだ。 もちろん、既存顧客で売上げの多くを挙げ、うまく回っている企業もあるが、それだけでは未来が描けない。既存顧客は最も大切なのだが、それに頼っているばかりでは、良くても現状維持である、顧客という資産が増えていかないからだ。だからこそ新規開拓が成長には必要なのである。新規の顧客は明日の既存顧客になるのだから、不断に獲得し続けることが安定した収益につながる。顧客資産を増やさない限り自社の成長はない。そこで、新規顧客を開拓しようと営業活動を開始するのだが、実のところどうやっていいか分からないという企業が非常に多いのだ。

これは、歴史的に営業現場が常に内包してきた課題なのだが、世の中の成長が止まり、会社の成長が止まって初めて、「やっぱり新規の発掘をしなきゃだめだよな」と気づいた次第である。新規開拓に注力しようと号令をかけ、今年こそやるぞと意気込んで、配置転換で元気な営業マンを連れてくるなど、人や組織も変えてアプローチを始める。電話をかけたり、セミナーを開催したり、飛び込み営業をしたりする。

しかし、こうした活動はなかなかすぐには結果につながらないので、そうこうしているうちに足元の売上げ目標の達成が危うくなると、「こんなの割に合わない!」となる。「じゃあちょっと新規は来期に回して、今期は既存で数字をあげるしかないな」となり、結局、従来の既存顧客頼みの数字づくりになってしまう。しばらくして既存顧客の案件が枯渇してくると、「やっぱり新規をやるしかない」と、やたらめったら動いてみては、それもしばらくすると忘れてしまう。どうにか今期の数字を達成できたとしても、新規顧客が増えないのでいつまで経っても不安は解消されない、というサイクルに陥りがちなのである。

結局、シェアも落とすし、顧客という大事な資産も目減りし、成長路線から維持路線、ひいては下降線をたどってしまうことになるのだ。

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こちらのコンテンツは書籍『ハイブリッドセールス戦略―法人営業部隊の刷新』から抜粋しております。

書籍名:ハイブリッドセールス戦略法人営業部隊の刷新

著者:吉田 融正

1983年東京理科大学経営工学科卒業後、日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。営業課長、営業部長、副社長補佐を歴任する。1994年米国IBMに出向し、コーポレートストラテジー、PCカンパニーへ配属。1997年米国シーベル・システムズに入社し、日本シーベル株式会社の設立に参画。取締役営業本部長に就任。2002年1月ブリッジインターナショナル株式会社を設立し、代表取締役社長に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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