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出版社とAI ~これからのクリエイティブのカタチ~

著者:GMCブランド戦略室

ビジネスにおいて人工知能(AI)が最も活用され、その効果を期待されている役割の一つに「業務効率化の推進」があるでしょう。

「コールセンター業務にチャットボットを導入、オペレーター業務をサポートし回答時間を短縮する」という事例を、しばしば耳にするようになりました。宅配便の再配達依頼も、これまでは音声対応で数分間かかっていたのが、今はチャットボットを使えば数十秒で完了するのです。

そんな効率化を目的とした仕組みと、クリエイティブの要素を掛け合わせることには、大きな意味があるのではないかと考えています。

効率化を求められるのは、日常的に利用される業務基盤システムであることが多いものです。BtoCであれば生活者が直接アクセスし、使うシーン・動機が絞られており、解決したい目的が明確であることが多いでしょう。生活者とのコミュニケーションシナリオを想定し、プランニングしやすい条件が揃っているのではないでしょうか。また、人工知能にとって学習に適したデータが集まりやすく、精度が上がっていく余地もあります。

クリエイターがコミュニケーションの方向性を設計し、人工知能の挙動を制御しやすい利用状況であるなら、クリエイティブ要素を寄り添わせ、広告としての役割を加えることも可能ではないかと考えます。

書籍においても、同じことが考えられるのではないでしょうか。
公立はこだて未来大学の松原仁教授が率いる「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」ではAIを用いて日本を代表するSF作家、星新一の作品を1,000以上分析。人間とAIの協業で完成させた『コンピュータが小説を書く日』など2編の作品を2016年の第3回日経星新一賞に応募し、一部は一次審査を通過しました。

また、実は2016年の日経星新一賞の応募作品の中にはもう一つ、AIが創作した作品がありました。東京大学の鳥海不二夫准教授が率いる「人狼知能プロジェクト」による、心理戦ゲーム「人狼」をAIで実行したログを小説化したものです。

2017年の日経星新一賞には両チームがタッグを組んで参加。人狼知能プロジェクトのAIが生成したログを元に「作家ですのよ」のAIが小説にする、という手順で作品を作ることで、人間との「協業」ではなく「0からコンピュータが創作した小説」として応募するに至ったのだといいます。

芸術展が開かれるまでに発展している、AIによる創作活動。これらに著作権をはじめとする知的財産権は発生するのでしょうか。

実は政府により、こうしたAI創作物の知的財産に関する議論の場は度々設けられています。本格的な法整備に向けて、既に国が動き出しているのです。

2003年に内閣に設置された知的財産戦略本部では『知的財産推進計画』というドキュメントを発表しています。その最新版(2017年版)にも、AIの創作物についての記述が見受けられます。

ほか、同本部が2016年4月に発表した『次世代知財システム検討委員会報告書』や、内閣官房知的財産戦略推進事務局が2016年1月に発表した『AIによって生み出される創作物の取扱い(討議用) 資料2』などを見ても、AIによる創作物について様々な着眼点が示され、多様な角度から考察されていることが分かります。

議論は活発に行なわれてはいるものの、残念ながら最終的な結論はまだ出ていません。

AIによって大量に生産される創作物の中には、人間の目から見て品質の高い物もあれば低い物も出てくるはず。それぞれの判断を誰がどのように下していくのかも、検討すべき内容でしょう。

これからさらにAIの発達が進み、人間の創造を超える日も遠くないでしょう。 その時のために、「作り手」はどのようなプラットフォームを整えておくのかが、重要になってくるでしょう。

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