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不動産業界が抱える「2022年問題」

著者:GMCブランド戦略室

2022年の「生産緑地」の指定解除。
これが日本全土の地価に影響し、地価の崩壊を招くという見方があります。

不動産業者の間ではすでによく知られた問題ではありますが、そもそも「生産緑地」とはなんなのか。どのような影響を及ぼすと考えられているのか。具体的に、誰に、どのようなメリット・デメリットがもたらされるのか。
今回はそんな不動産業界の抱える「2022年問題」に迫ります。

業界に打撃を与えるのは東京オリンピックだけではない

不動産業界が抱える問題の一つとして、東京オリンピックを思い浮かべた人もいるのではないでしょうか。オリンピック閉会後の東京の地価をめぐって、専門家や投資家の意見が現在進行形でさまざまに飛び交っています。オリンピック以後の不動産バブル崩壊を唱える声や、楽観した意見など、どうなるかは判然としていません。

そんな2020年のあとに不動産業界の抱えている爆弾が、「生産緑地」の指定解除。こちらの問題はなべてよい見方・見解がみられません。
「生産緑地」の指定解除とは、一体どのようなものなのでしょうか。

「生産緑地」ということばの意味

そもそも「生産緑地(地区)」とは、生産緑地法(1974年制定、1992年改正)において指定された区域をさします。
目的と定義を、それぞれ条文を引用して紹介します。

生産緑地法
(目的)
第一条 この法律は、生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資することを目的とする。

都市開発にさらされるなかで、農林漁業での使用を目的とした土地を、この法律で保護するというわけなのです。
続いて、「生産緑地」ということばの定義を確認していきます。

(定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
三 生産緑地 第三条第一項の規定により定められた生産緑地地区の区域内の土地又は森林をいう。 第二条第三項を参照すると、第三条第一項に書いてあることが「生産緑地」ということばの定義になるということです。
その第三条を見ると、以下のように書いてあります。
第三条 市街化区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の規定による市街化区域をいう。)内にある農地等で、次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については、都市計画に生産緑地地区を定めることができる。
一 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。
二 五百平方メートル以上の規模の区域であること。
三 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。

つまり、市街化区域(23区、首都圏・近畿圏・中部圏内の政令指定都市)にある、500平方メートル以上の農林漁業に従事できる土地。これが「生産緑地」の定義です。この法に則って、よい立地において「生産緑地」であると指定されていたものが、そうでなくなる時が2022年というわけなのです。

誰が得をする?誰が損をする?

・土地所有者
これまで「生産緑地」として受けてきた税制面の優遇がなくなり、固定資産税が数百倍に跳ね上がります。継続して「生産緑地」として優遇を受けるには、農林漁業を継続して従事できる環境であること、従事者がいることを証明する必要があります。それができない継続所有希望者は、大きく苦しめられると考えられるのです。
一方、これを機に売却したい土地所有者は、持っている土地のスペック次第で損得が分かれるでしょう。
売却する場合は、自治体が時価で買い取るものとされてはいますが、基準が不明瞭で、買い取り実績は今のところほとんどありません。不動産業者などが触手を伸ばすと考えられますが、2022年、いっせいに土地が手放されれば、希望額での売却がかなうとはかぎりません。

・不動産業者
 固定資産税に苦しめられる所有者が「生産緑地」を手放していくとすれば、新たに不動産を建設できる土地が増えることになります。建設業者の稼働需要は一時的に高まるでしょう。一方で、空室率が上昇し続けている昨今の不動産業界。物件を建てたところで買い手・借り手がすんなりと見つかる保証はないのです。

・不動産投資家
 以上のことを考えると、新たな物件に投資しても、客付けに困り、家賃収入が低くなるというリスクが浮かびます。ますます立地と物件のスペックなどの見極めが必要となり、不動産投資での「勝敗」も明確に分かれてくるのではないでしょうか。

どの立場であっても、決して油断はできません。2022年「生産緑地」指定解除問題に、国と各自治体はどのような対応策を提示しているのか。その動向を逐一見つめておかなければ、思わぬ損を被ることになりそうです。

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