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未開拓市場”ブルーオーシャン”を切り開く「文化開発」

著者:GMCブランド戦略室

新規市場の開拓が難しい時代

近年、多くの企業のマーケティング部門が「新規事業の立案」で頭を悩ましています。
世の中には多くの製品やサービスが溢れ、既存品の改良を行う「技術開発」だけでは他社との差別化が図れなくなっているためです。これまでより品質の高い新製品や新サービスを打ち出しても製品鮮度は短く、すぐさま価格競争に陥ってしまい、結果十分な利益を上げることができないのです。

まず新規事業を立案する際に考えるべきことは、「市場の発生」を試みることです。新たな市場、いわゆる「ブルーオーシャン」を切り開くことができれば、競合企業との戦いによる消耗をすることがなく成功を収めることができます。しかし、実際には新しい市場を生み出すことはとても難しいことです。

では、どうすればこれを実現できるのでしょうか。

東海大学で教鞭をとる経済学者 三宅秀道氏は、これからの時代、新しい市場をつくるためには4つのプロセスから成る「文化開発」が必要であると説いています。

 

市場を生み出す「文化開発」4つのプロセス

三宅氏の説く「文化開発」とは、世の中にまだない新しいコンセプトから価値を創造する、商品・ライフスタイルの企画を行うことです。そのプロセスは以下の通りに分かれます。



文化開発

⑴問題開発
これまで問題とされることのなかったことを問題と捉える意識を新たに構築する。

⑵技術開発
開発された問題の解決手段として製品やサービスが形づくられる。

⑶環境開発
形づくられた製品やサービスが社会的に利用されるためのネットワークの構築や、
制度の確立などのインフラが整備される。

⑷認知開発
消費者の教育、製品・サービスの宣伝により世に広く知らしめることで、
社会にそれを利用しようとする欲求が普及し、社会的な生活習慣となっていく。


新しい問題意識を市場に持ち込み、それを解決するための技術を開発する。そしてそれを活用するための社会的な仕組みを作り、世の中に広く認知させる。この一連のプロセスをうまくマネジメントすることで新たな市場を生み出すことができるというわけです。
必ずしもこの文化開発のプロセスは順番通りに進むとも限りませんし、開発した人間が最後まで担当しなければならないというわけではないという点は認識しておかなければいけませんが、この一連のプロセス中で一番重要なのは「新しい問題の開発」であることは間違いありません。
まだ誰も気付いていない、あるいは潜在的に気付いていてもそれが未だ健在化していない新しい「ニーズ」、それを開発できるかどうかが出発点なのです。

 

ミシュランガイドに見る書籍による文化開発

この文化開発で有名な事例として、フランスのタイヤメーカー、ミシュラン社の取り組みがあります。
タイヤメーカーでありながら、ミシュランがレストランやホテルのガイドブックを出版しているのは、もともとは自動車旅行の文化習慣を広めるためであったのです。
現在では自動車の普及によりタイヤ産業も盤石になり、ミシュランガイド自体もグルメガイドの金字塔として認知されているため、両者の関連性が意識されることはあまりありませんが、1900年に創刊号が発行された頃は自動車の性能も十分とはいえず、未だ馬車に取って代わるほど普及は進んでいない時代でした。
そこで、ミシュランは国内各地のレストランを格付けして紹介することで、そのお店へ行きたくなる人を増やし、自動車を、ひいては自動車の部品であるタイヤの需要を大きくしようと考えたのです。

このようにミシュランガイドは決して企業メセナや社会貢献としてではなく、あくまで商品需要の拡大を目的として始められたものであり、いまでも同社のブランディングに非常に効果を発揮するツールとなっています。

 

市場開拓のためには各プロセスのマネジメントと手法の選択が重要

文化開発による市場開拓を企業が目指すためには各プロセスに対して別々の部門が個別に取り組むのではなく、一連のプロセスをうまく連動させられるようマネジメントすることが重要となります。
このような観点から言うと、各部門の力が大きく分配されている大企業よりも、経営者と部門担当者の距離が近い中小企業の方が、その効果を発揮しやすいのかもしれません。
また、文化開発において重要なのはその手法です。技術開発についてはその製品、サービスについての専門的な技術力が鍵となりますが、新たな問題を認識させ、環境構築の重要性を啓蒙し、社会への普及を促すためには書籍をはじめとしたツールが重要となるのです。
自社の特性や各ツールとの親和性などを鑑みながら、最適な手法を検討しましょう。

 

幻冬舎メディアコンサルティング

太田 晋平

 

※出典:『新しい市場のつくりかた』三宅秀道(東洋経済新報社、2012)

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