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【連載第5回】企業価値と持続可能性を高める! 現代企業に求められる「見えない資産」づくり

著者:細田 悦弘

近年、先進諸国において、形のない「無形資産」が企業の価値を決める要素として大きくクロースアップされるようになりました。無形資産は、賃貸貸借票に計上されることがない「見えざる資産」です。しかし、物的資産や金融資産などの有形資産と同等か、それ以上に企業価値を生み出す原動力になっています。

視点で異なる企業価値の2つの定義

さまざまな場面で語られる「企業価値」には、大まかに2つの傾向があります。 1つは、多くの経営者やビジネスパーソンがよく使う「企業が社会的に評価される総合的な価値」としての企業価値です。これはすなわち、企業を取り巻くステークホルダーに対する付加価値の総和ということができます。企業価値を高めるためには「卓越した製品・サービスを提供することで社会の課題を解決し、収益を上げていく」といったニュアンスが感じられます。

もう1つは、投資家・金融関係者や企業経営者がしばしば口にする「市場価値と本質的価値の総称」としての企業価値です。市場価値は、株価の時価総額など、市場評価によって規定される価値で、本質的価値は企業が持つ競争優位性と社会的評価によって規定される価値です。

この2つは一見異なる解釈のようですが、視点が異なるだけといえます。通常、投資家は、企業価値は投資を行うための経済的な評価額ととらえる傾向にありますので、後者の立場で論じています。

企業価値向上に不可欠な4つの施策

サステナビリティ時代において企業価値の向上を目指すためには、「CSR」「CSV」「ESG」「SDGs」の4つの概念を整理しておく必要があります。

「CSR」は、Corporate Social Responsibilityの略で、通常「企業の社会的責任」と訳されます。しかし、現代のビジネスのあり方を考えるにはこの解釈では不十分です。「CSR」 の「R」であるResponsibilityは、response(反応、対応)とability(力、能力)から成っています。「CSR」の根幹にあるのは“対応”で、「企業の社会への対応力」が「CSR」の本質です。

「CSR」には、2つの種類があります。企業は、自社のビジネスが人権・労働、消費者や環境などに悪影響を与えるのを防ぐ、あるいは緩和することが要請されています。この要請に応えるのが「基本的CSR」です。一方、企業は社会的ニーズに対応することで社会的価値も創出することができます。こうした社会からの期待に応えるのが「価値共創型CSR」で、これが「CSV(Creating Shared Value=共有価値の創造)」にあたります。

現代の優れた企業は、「CSR」を経営に組み込むことでステークホルダーから信用・信頼を獲得し、社会的評価を高め、持続的成長・中長期の企業価値向上を目指します。こうした取り組みは、財務情報としては出てきません。しかし、投資家は企業のこうした取り組みを「ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)」の3つの観点から評価します。

「SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)」は、2015年9月に国連で採択された、2030年までに達成すべき貧困・飢餓・教育・気候変動・生物多様性などグローバルな課題に対する取り組み目標です。サステナビリティ時代において企業価値の向上を目指すには、この「SDGs」を視野に入れておく必要があります。

この「CSR」「CSV」「ESG」「SDGs」は、企業価値の向上とどのように関わってくるのでしょうか。 企業は、現代社会の共通の目的である「サステナビリティ」に関する潮流をとらえ、経営のあり方や事業戦略において柔軟に対応することが求められています。

「CSR」の本質は、社会への対応力です。この場合の社会とは、時代の価値観を反映したステークホルダーといった意味です。そして、企業が“対応”するのは「現代社会の要請や期待」です。要請に対応するのが、「基本的CSR」。期待に応えるのが「CSV」。その際、「SDGs」に留意することが重要です。

こうした一連の活動により、ステークホルダーの評価が高まります。それが「社会的評価」です。「社会的評価」とともに「競争優位性」が発揮されると、時代にふさわしいブランド力につながります。「ブランド力」が高まれば、企業のなかに「見えざる資産」が形成されます。

この「見えざる資産」は、将来キャッシュフローを生み出すドライバー(原動力)となります。すると、企業の本質的価値が高まります。これを、投資家は「ESG」で評価します。そのために、「CSR」で育んだ非財務の要素を的確に発信して、市場価値への反映を図ります。 これが、「CSR」「CSV」「ESG」「SDGs」を活かした企業価値創造のストーリーです。

企業が利益創出を継続するために、競争優位性を生み出す将来への投資を

企業とは、「営利を目的として、継続的に生産・販売・サービスなどの経済活動を営む組織体」です。そして、企業は継続することを前提として設立されます。そのためには、いかなる企業も利益を上げ続けなければなりません。 「利益」は、社会の要請や期待に応える優れた経済活動を実践している企業に対して、社会がそれを評価し、与えた対価といえます。時代の価値観にそぐわないビジネスには、対価は与えられません。

社会にとって意義ある経済活動を行っている企業に対する社会からの対価が「利益」であるなら、「企業価値」とはその企業が将来にわたって生み出す利益の合計額(あるいは現在価値)といえるでしょう。

時代に選ばれ、次代にも輝き続ける「企業価値」をもつ企業であるためには、「CSR」「CSV」「ESG」「SDGs」を経営に取り入れて時代に合ったブランド力を高め、「見えざる資産」を作ることが大切です。これらの取り組みを“自分たちらしさ”を触媒として経営と融合させることで、自社ならではの持続的な競争優位性を創出することができます。それが、サステナビリティ時代の企業ブランディングです。

(こちらのコンテンツは書籍『選ばれ続ける会社とは 〜サステナビリティ時代の企業ブランディング』から抜粋しています)

こちらのコンテンツはこの書籍から抜粋しております。

書籍名:選ばれ続ける会社とは 〜サステナビリティ時代の企業ブランディング 著者:細田 悦弘

細田 悦弘
中央大学大学院 戦略経営研究科 フェロー / 一般社団法人日本能率協会 主任講師
1957年、愛知県生まれ。中央大学法学部卒業後、キヤノンマーケティングジャパン(株)入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、同社・CSR本部に所属しながら、企業や大学での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。

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