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"万人受け"ブランドを目指すマス広告は、 実は信頼感を下げる原因になっている?

著者:GMCブランド戦略室

商品の背景やストーリーに価値を見いだす消費者たち



「○○電気のテレビ」「××食品のカレールー」「△△石鹸のシャンプー」等々、商品のジャンルや名前はそれぞれ違えど、これまで企業の多くは、特定の少数者ではなく不特定多数の消費者に好まれるブランドを市場に投入することに意を注いできました。しかし、そのような〝万人受け〟ブランドは、消費者の価値観が多様化する中で絶対的な支持を集めにくくなっています。

まずは「消費者価値観の変化」を示す2つのグラフをご覧ください。いずれも、経済産業省の呼びかけで企業・有識者等により構成された「消費インテリジェンス研究会」(「消費者理解に基づく消費経済市場の活性化」研究会)の手でまとめられたものです。

[グラフ1]消費者価値観の変化(自分に合ったものを求める)

グラフ1に表れているように、この10数年の間に、商品を選ぶ際の基準となる価値観として価格を重視する人が大幅に減少しているのに対し、「自分のライフスタイルや好きなものであるか」「気に入っているかどうか」などというように「自分に合っているかどうか」を重視する人が増加傾向にあります。

[グラフ2]消費者価値観の変化(共感を求める)

また、グラフ2では、「商品の背景やストーリーまで含めて商品の価値」とみるのか否かに関するアンケートの調査結果が表されています。そこに示されているように、「モノがよければよい」という人よりも、商品の背景やストーリーまで含めて商品の価値だと考える人のほうが多い結果となっています。

このような「消費者価値観の変化」のグラフからは、自らのライフスタイルや嗜好にあった商品、共感できるモノを欲する—そうした十人十色のニーズをもった消費者の姿が浮かびあがってきます。万人を対象としたブランドが、そのような消費者が求めているものでないことは明らかでしょう。

マス広告を重視しない傾向が強まっている



消費者の価値観がこのように多様化の傾向を強める中で、モノの売り方、宣伝の仕方も大きな見直しを迫られています。

これまでの日本ではすべての消費者をターゲットに同じ方法で商品・サービスの宣伝を行う「マスマーケティング」がプロモーションの主流でした。テレビCMや雑誌広告、新聞広告等のいわゆるマス広告を大々的に駆使して消費者にブランドイメージを一気に浸透させることで市場シェアを獲得する—それがプロモーション戦略の王道中の王道とみなされてきたのです。

しかし、このようなマス広告を主軸とする画一的なプロモーション手法は万能とはいいがたくなっています。

まず、消費者の間では、テレビCMや雑誌広告、新聞広告から得られる情報を重視しない傾向が年々強まっています。

大手シンクタンクの野村総合研究所は、商品やサービスを購入する際に利用する情報源の推移に関する調査を定期的に実施してきました。以下は、その結果をまとめたものです。

(野村総合研究所「『生活者年末ネット調査』からみる5年間の変化〜効率よく消費・余暇を楽しむスマートな消費者へ〜」より引用)
2012年 2015年
①テレビのコマーシャル 51・1% 44・8%
②ラジオ、新聞、雑誌の広告 41・5% 30・5%
③テレビ・ラジオの番組 19・9% 16・2%
④新聞の記事 27・6%  22・5%
⑤雑誌・フリーペーパー 16・2% 15・2%
⑥折り込みちらし 36・6% 31・0%
⑦店舗の陳列商品・表示情報 50・2% 55・1%
⑧販売員などの意見 30・2% 35・4%
⑨信頼できる身近な人 21・0% 24・2%
⑩企業が発行するカタログ・ホームページ 23・6% 23・2%
⑪ネット上の売れ筋情報 22・0% 29・6%
⑫評価サイトやブログ 23・9% 34・2%

2012年から2015年の3年間で、①テレビのコマーシャル、②ラジオ、新聞、雑誌の広告、③テレビ・ラジオの番組、④新聞の記事、⑤雑誌・フリーペーパー、⑥折り込みちらしを情報源として利用している人の数は明らかに減少しています。テレビのコマーシャルは約6%、ラジオ、新聞、雑誌の広告は約11%も減っているのです。

広告メディアへの信頼感は下がっている



また、従来、マス広告のなかで、一般消費者に対して最も大きな影響力をもっていたのはテレビCMでした。「テレビCMで宣伝されているブランド=信頼できる」という意識・認識が日本人の間で広く共有されていたことは確かでしょう。実際、「CMで見たから」という理由だけで商品を購入するような人たちが一昔前の日本には大勢いました。

しかし、日本人がCMに対して抱いてきたそのような絶対的な信頼感は、もはや過去のものになろうとしています。例えば、宣伝・広告の専門誌として知られる『宣伝会議』は、一般消費者300人を対象にテレビCMの信頼度・信用度に関する調査を行い、2016年12月号の同誌で公表しています。その中身の一部を見てみましょう。

①「『テレビCMを出している会社』であることは、その企業に対する、あなたの信頼度に影響を与えますか」

はい 51・7%

いいえ 48・3%

②「あなたは、商品・サービスの選択の基準として『テレビCMを見たことのある企業の商品・サービスであること』を、どの程度重視していますか」

非常に重視している 2・7%

重視している 30・7%

どちらとも言えない 40・0%

あまり重要でない 13・7%

全く関係がない 13・0%

③「あなたは、テレビCMを見たことのある企業でも、「信用に値しない」と感じることがありますか」

ある 49・3%

ない 0・7%

まず、①の回答が示しているように「テレビCMを出していることが、その企業に対する信頼度に影響を与えない」と答えている人は半数近くに達しています。しかも、③では、「CMを見たことのある企業でも信用に値しないと感じることがある」と回答している人が半数近くいます。また、②が示しているように商品・サービスの選択の基準としてCMを重視している人は3分の1程度に過ぎません。

このように、以前のように「CMで見た企業・ブランドだから」というだけでは信頼を得ることは難しくなっているのです。

ネット時代において、CMはもはや金の無駄使いでしかない



CMの影響力に関してより根本的な指摘をするならば、そもそも「テレビCMは年々見られなくなっている」現状も存在します。下記に示したのは、野村総合研究所が2017年9月に公表したテレビCMに関するアンケート調査の結果をまとめたものです。

グラフ3は「テレビ視聴時間の推移」を示したものですが、2010年から2017年で1週間あたりのテレビの視聴時間は1時間ほど減少しています。また、グラフ4は「テレビをほぼ見ない層の推移」を示したものです。ご覧のように、テレビをほぼ見ない層の割合は上昇傾向にあり、20代では何と25%に達しています。

[グラフ3]テレビ視聴時間の推移 [グラフ4]テレビをほぼ見ない層の推移(性年代別)

ちなみに、CM以外のマス広告についても、具体的には雑誌広告や新聞広告に関しても一般消費者の目に触れる機会はかつてに比べて確実に減っています。

グラフ5は出版物の推定販売額の推移を示したものです。データをまとめた公益社団法人全国出版協会によれば、月刊誌・週刊誌ともに1997年をピークに、以降19年連続のマイナスであり、販売・広告ともに不振の状況に陥っています。休刊点数が創刊点数を上回り、総銘柄数は10年連続で減少しています。

また、一般社団法人日本新聞協会の統計によれば、新聞(一般紙)の発行部数は2000年は4,740万1,669部でしたが、2017年には3,876万3,641部にまで減少しています。わずか17年で実に1,000万部近くも減ってしまったのです。

このように、雑誌も新聞も部数が右肩下がりで減り続けているのですから、当然、雑誌広告、新聞広告に接する人の数も減少していることになります。 さらにいえば、人々はマス広告に限らず、マスメディアそのものに対して不信感を強めているようです。

[グラフ5]出版物の推定販売額の推移

野村総合研究所の調査では、メディアに対する信頼度が低下傾向にあることが示されています。グラフ6のように、新聞に対する信頼度は70%を下回っていますし、テレビ(民放)については信頼をしていると回答する人が50%を下回っています。

価値観が多様化する中で、〝マス的なもの"を「一元的な価値観を一方的に押し付けてくるもの」として消極的にとらえる傾向が日本人の間で強まっているのでしょう。

[グラフ6]メディアに対する信頼度の推移

こちらのコンテンツは書籍『ニッチブランド革命』から抜粋しております。

書籍名:ニッチブランド革命デジタルマーケティング時代のヒットの法則

著者:山口 恵市 (株式会社ファヴールマルシェ)

株式会社ファヴールマルシェ代表取締役社長。 20歳で広告代理店に入社し、商品のパッケージや広告物をデザインするなか、既存のブランドのPRに貢献するだけでなく、主体となってブランドをつくりたいと考え、転職を決意。ECを利用したブランドビジネスを行っていた会社に注目し、デザイナーとして就職する。

2014年、株式会社ファヴールマルシェ設立の折に社長に就任。以後3年で生み出したブランドは10件以上、商品は累計50点以上にのぼる。 現在では、ECを利用してブランド創出から流通までを自社で担う、新しいブランドビジネスを確立、提唱している。

社名である「ファヴールマルシェ」は、「恵市」という名前をもとに「faveur(恵み)」ある「marché(市場)」を多くつくりたいという思いをこめてつけられた。

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