強いファンを獲得し、売上を一気に伸ばす 「ニッチブランド戦略」とは?

著者:山口 恵市

2019.07.12

目次

ニッチブランドの定義

「ニッチブランド」という言葉には馴染みがあまりないという人が多いかもしれません。 ニッチブランドとは、一般に「特定の市場における少ないニーズに応えることで消費者から強い支持を得ているブランド」などと定義されています。

分かりやすくいえば、ルイ・ヴィトンのバックやシャネルの香水のように世間一般に広く知られているメジャーなブランドではなく、ごく少数の人の「こんな○○があったらいいのに……」「○○なモノが製品化されたら、是非ほしい!」という思いに応えて生み出された商品ということになります。

極端な例になりますが「野外でも塩キャラメルを作って食べられる〝ポータブル塩キャラメル製造機"」が開発・販売されたとすれば、それはまさに右の定義でいうニッチブランドということになるかもしれません。塩キャラメルが好きな人は多いでしょうが、さすがに「ハイキングやキャンプで塩キャラメルを作って食べたい!」という人はごく限られているでしょう。ニッチブランドは、そうした限定された顧客をターゲットにするものといえます。

また、ニッチブランドを、マーケティング戦略の観点から定義付ければ「市場規模や利益率が小さすぎるため、大手企業が参入してこないジャンルの商品」ということもできるでしょう。ニッチブランドは限定された顧客を対象とするため本質的に需要が限られ、数百億円、数千億円という大きな売上は期待できません。そのため、大手企業はニッチな商品の市場があることを認識していたとしても、「売上を考えたら割に合わない」と触手を伸ばしてこないのが通常です。

逆にいえば、ニッチブランドには大手の商品と競合することがない、つまりは強力なライバルとの競争を避けられるというメリットがあるわけです。実際、メーカーの中には、ニッチブランドの開発・販売に特化することで大手企業との差異化・差別化を図り、成功を収めている企業もあります。一例をあげると、中堅メーカーのツインバード工業は、消費者のニッチな需要に応じた家電製品を次々と市場に送り込み業績を伸ばしています。

例えば同社が2017年11月に発売した「2ドア冷凍冷蔵庫 ハーフ&ハーフ」は、一般的な冷蔵庫と違いスペースの半分が冷凍室となっています。単身世帯が増加し冷凍品に対するニーズが高まっているなかで「冷蔵庫にもっと冷凍スペースがほしい」という声に応えて作られたもので、発売後から生産が追いつかないほどのヒット商品となりました。

このように、ニッチブランドは、大手が手を出さない〝ニッチ(隙間)〟を狙うがゆえに確実な売上・利益を期待することができるのです。 「ということは、本記事ではそのようなニッチブランドのつくり方を、つまりは少数の人のニーズに応える商品を、大手企業が参入しないようなジャンルの商品をどのように企画・開発するのかをこれから教えてくれるのだろうか」

もし、ここまで読み進めてそう思った人がいたとすれば「半分は正解」といえます。 確かにブランドもしくはブランドづくりという言葉には、「モノそのもの」あるいは「モノづくり」のイメージがあります。例えば新しい日本酒のブランドを立ち上げる場合で考えてみると、商品となる日本酒自体と、その商品デザイン(ロゴやパッケージデザイン等)を完成させることができれば「新しいブランドが生まれた!」「ブランドづくりの作業はこれでおしまい」と思う人がほとんどのはずです。

しかし、私は「ブランド創出」という観念を、このようなモノづくりのプロセスだけにはとどまらないものと思っています。そもそもモノには、それが誕生するに至った理由なり背景なりが存在します。とりわけニッチなニーズから生まれたモノには、それをつくった人の特別な思いや商品開発までの苦労話などひときわユニークな〝物語"があります。そうしたモノのストーリーを伝えること、さらにはそのようなストーリーをもったモノを消費者のもとに届けるところまでが〝ブランド"であると私は考えているのです。

そして、ブランドをそのようにとらえるならば、「ニッチブランド」とは、ニッチなニーズに応える商品を、「つくる」「伝える」「売る」という3つのプロセスを通じて消費者に対して提供することと定義できるかもしれません。

これらの3つの要素、「つくる」「伝える」「売る」の具体的な中身については後ほど改めて詳しく解説しますが、そもそもなぜ今ニッチなニーズに応じた商品・サービスが市場に登場し、そして注目を集め始めているのでしょうか。

その理由を理解するためには、現在、ブランドとそのプロモーションのあり方に、巨大な変化の波が押し寄せていることをおさえておく必要があるかもしれません。

以下に述べるように、今、ブランドの世界は大きく揺れ動いており、あたかも〝革命前夜"のような状況に直面しているのです。

ニッチブランドは1万人に1人の支持を得られればよい

オリジナルブランドの創出に取り組むことは新しい事業への投資となるので、「本当に儲けがでるのだろうか」と不安を感じる人もいるかもしれません。

しかし、心配はご無用です。ニッチブランドの世界では、1万人に一人の支持を得ることさえできれば十分にビジネスとして成り立つからです。

1万人に1人というと「たったそれだけ?」と思うかもしれませんが、母数が10万人なら10人、100万人なら100人、1,000万人なら1,000人、1億人なら1万人です。1万人単位、1,000人単位の人達が購入してくれれば、利益をあげることは十分に可能でしょう。

そして、ニッチブランドであれば、SNSの力によって、それだけの数の人達が顧客となることを期待できます。1万人のうちの1人が「絶対にこの商品がいいよね」と思ってくれれば、SNSでその情報を拡散してくれるでしょう。するとその情報を受けとった人の中からまた「いいよね」と情報を発信する人が現れるはずです。そのように口コミで伝わっていくうちに、商品を購入する人が1人、また1人と増えていき、気づいたら1,000人、1万人がいつの間にかお客さんになっていたということが起こってもまったく不思議ではありません。

実際、私の会社とグループ会社でも、そのような口コミ等をプロモーションにフル活用して、商品の売上につなげてきました。

そうして確かな実績をあげてきた経験から断言できるのですが、ニッチブランドはローリスクで手堅く利益を得られる安全で確実なビジネスといえます。

分かりやすい例をあげると、ニッチなニーズに応じた特殊なシャンプーを原価1,200円で1,000個作り、定価4,000円で販売したとします。仮に思っていたように売れなかったとしても、この程度の数量であれば、PDCAサイクルによる改善を試みることによって全て売り切ることが可能であり、その結果、十分な利益を確保できるはずです。

ブランド創出はさまざまな方法で実現できる

ニッチブランド、個人ブランドに注目が集まるなかで、ブランド創出をサポートするサービスや仕組みもさまざまなかたちで生まれています。

現在、私の会社でも「ブランドをつくってみたい」という人達のサポート事業に本格的に取り組んでいるところです。 新たなブランド創出支援のかたちとして、モノづくりの情熱をもった人にともにオフィスで働いてもらいながら、ブランドづくりのノウハウを一から学んでもらう試みがスタートしています。

具体的には、「知識もノウハウもお金もないが、個人ブランドを立ち上げてみたい」という志や強い思いをもつ人を2年間の期間限定で社員として雇い入れます。オフィスにいる時間の8割は通常の業務を担当し、残りの2割で自分のブランドを考え、そして2年目で商品化を実現していくというイメージです。

仮に2019年1月1日に入社したとしたら、2021年1月1日にはブランドを立ち上げ商品をリリースするというかたちになるでしょう。そして立ち上げたブランドの運営が、無事、軌道に乗ったら会社からスピンアウトして、そちらの事業に専念することになります。

このスキームを利用して、個人ブランドを起こす人達が何十人、何百人と現れれば、販路先、提携先の幅も広がるなど私の会社にとってもメリットは小さくありません。また、ニッチブランド市場のさらなる活性化につながることも期待できるでしょう。

こちらのコンテンツはこの書籍から抜粋しております。

書籍名:ニッチブランド革命デジタルマーケティング時代のヒットの法則 著者:山口 恵市 (株式会社ファヴールマルシェ)

株式会社ファヴールマルシェ代表取締役社長。 20歳で広告代理店に入社し、商品のパッケージや広告物をデザインするなか、既存のブランドのPRに貢献するだけでなく、主体となってブランドをつくりたいと考え、転職を決意。ECを利用したブランドビジネスを行っていた会社に注目し、デザイナーとして就職する。
2014年、株式会社ファヴールマルシェ設立の折に社長に就任。以後3年で生み出したブランドは10件以上、商品は累計50点以上にのぼる。 現在では、ECを利用してブランド創出から流通までを自社で担う、新しいブランドビジネスを確立、提唱している。
社名である「ファヴールマルシェ」は、「恵市」という名前をもとに「faveur(恵み)」ある「marché(市場)」を多くつくりたいという思いをこめてつけられた。

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