読者が最後まで読み続ける「書籍の構成」の秘密
本原稿は、WEBメディア「幻冬舎ゴールドオンライン」で配信(2020年9月18日付)された原稿を転載したものです。
出版市場は近年、右肩下がりを続けています。小説は読まれず、雑誌も発行部数の減少が止まりません。唯一「売れ筋」と言えるのは、実用書やビジネス書、医療・健康書など読者にとって即メリットになるジャンルです。なかでも、企業が出版資金を出し、ブランディングの一環として書籍を作り上げていく「企業出版」には、各社が参入し、盛り上がりを見せています。果たして、この新しいビジネスモデルは、「斜陽」と揶揄される出版業界の救いの手となるのか? 企業出版のパイオニア、株式会社幻冬舎メディアコンサルティングで取締役を務める佐藤大記氏に話を聞きました。
読者がページをめくらざるを得ない構成とは?
幻冬舎メディアコンサルティングが創出した企業出版という新市場。ここには現在、多くの出版社が参入し、競争が激化しています。
一方で、企業から見ると、それぞれの出版社の差異はわかりにくいのが実状だと思います。知名度のある出版社も顔をそろえているので、どこも大差はないだろうと思われるかもしれません。しかし、それは間違いです、と断言できるほど自信を持っています。
では、幻冬舎メディアコンサルティングは他の出版社と何が違うのか。当社独自の「本づくり」の観点から、その優位性について説明したいと思います。
前回お伝えしたように、私たちは二つの独自スキームで書籍を制作しています。
一つは「GTRS」と呼ぶもので、「ゴール(G)、ターゲット(T)、リサーチ(R)、書棚(S)」の略です。もう一つは「TSO」で、「タイトル(T)、サブタイトル(S)、帯コピー(O)」の略です。
この「GTRS」と「TSO」の二つのスキームに基づき、書籍の「構成案」を作ります。この構成案が極めて重要で、その良し悪しによって、書籍を手に取った読者が最後まで読み終えるのか、途中で放り投げてしまうのかが決まってしまいます。
書籍の構成は、読者がどんどん先へ先へと読み進みたくなるような作りになっていることが大切です。特に最初のページでつまらないと感じると、それ以上は読まれません。ですから私たちが作る書籍は、読者がページをめくらざるを得ないような構成になっています。このページをめくらせるための構成こそが、当社の「勝ちパターン」なのです。
たとえば、4章立ての書籍だとします。第1章は「問題提起」です。まずは読者が置かれている環境やいま世の中で起きている社会問題などをバッサリ斬ります。そして、そうした問題に悩んでいる読者に対して「だからあなたは行動しないといけない」と訴求します。その上で、読者の耳の痛くなるようなことを述べながら、「確かにそのとおりだな」と危機感を抱かせる。これは共感にもつながりますが、第1章ではそうした状況を演出します。
第2章は「現状の整理」です。なぜそういった状況になっているのかを詳しく説明し、現状を把握できるようにします。読者は「なるほどそういうことだったのか」と理解するとともに、「ではどうすればいいのか」という境地に達します。読者は第1章と第2章までをジェットコースターに乗ったようなスピードで読み進みます。
課題解決できるのは書籍の著者である企業へと導く
第3章は「解決策の提示」です。ここでは、書籍の著者である企業や経営者の実績、ノウハウ、スキーム、ソリューションなどを詳述します。それらは読者の悩みを解消するための解決策であり、読者が自分と同じ事例だと共感できるようなさまざまな事例を紹介します。自分と同じ悩みを抱えている人の解決事例があることを知り、読者は少し安心します。こうして第3章では、読者は「どうすれば自分の悩みが解決するのか」がわかります。
最後の第4章は「結論」です。具体的にどう行動すればいいのかを示します。問題解決のためのソリューションを提供する業者の選び方や、信用できるパートナーの選び方などを、あくまでも「一般論」として解説します。ただし、その中にきっちりクライアント企業の情報を入れ込んでいきます。
相続対策を例にするならば、あなたの相続問題を解決できるパートナーの選び方はこうですと、10項目くらいのアドバイスを書きます。それは著者である企業と重なるようになっています。こうすることで読者が少し浮気をしたとしても、必ず戻ってくるのです。
たとえば、読者は書籍のアドバイスを参考にしながらネットで業者を探します。そして書籍に書いてあるチェックポイントを確認します。すると「A社はここが×」「B社はここが×」というように穴や欠点が見つかります。結果、チェックポイントをすべて満たすのは、書籍の著者である企業や経営者になるという仕掛けです。
このように読者にページをめくらせて、最終的に著者である企業にたどり着くように導く書籍の構成が、当社の「勝ちパターン」なのです。
私たちはスピードが価値だと信じている集団です
さらに他の出版社との差別化で付け加えるならば、書籍の提案のスピードを重視していることがあげられます。企業出版は競争が激化していますから、クライアントが複数の出版社から提案書(相見積もり)をとることも珍しくありません。そうした時に当社は一番早く提案します。実際、この対応が一つの要因となって受注するケースは少なくありません。
さらに、常に二の矢、三の矢を放つように先回りして提案するようにしています。企業出版も一般企業と同じで、商流はスピードが命です。出版業界は保守的な面がありますから、他の出版社は企業に対しても、どこか「書籍をつくってあげるよ」という意識がみられ、スピード感にも乏しい。私たちはスピードが価値だと信じている集団です。クライアント企業は目まぐるしく変化する経営環境に対応すべく素早い動きを求めています。そうした点も私たちが評価されている理由の一つだと思います。