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【連載第1回】「昔は売れていたのに……」業績不振に喘ぐBtoB企業の実態

著者:吉田 融正

業績不振に喘ぐBtoB企業は営業現場に問題を抱えているケースが多く見受けられる。本コラムではその実態にスポットを当て、企業経営者や現場責任者が改善すべき問題点を紹介する。

新規開拓をせず、優良な既存顧客に頼る体制が常態化している

さまざまなBtoB企業の営業現場を思い浮かべてみてほしい。20~30年前と何か変わっただろうか。まったくとはいわないが、ほとんど変わっていないのが現状ではないだろうか。経済環境がこれだけ変わり、製造も流通もバックオフィスも改革を行ってきたなかにあって、営業だけが変わっていない。

景気全体が上向いていた時代は、営業部門が聖域化されていてもそれで通用した。こと法人営業については、会社の売上の大半を占める顧客企業が日本経済全体の成長につれて右肩上がりだったため、上客であり続けてくれた。俗っぽくいえば、「一緒についていけば商売はやっていけた」のである。

しかし問題なのは、依存度の高い顧客企業の業績が低迷すれば、自社も一緒に低迷してしまうことである。大手企業でさえ 赤字になる時代だ。自社の取引先だけは赤字にならないなどという考えは、楽観的過ぎるだろう。

多くの企業では2割の数の顧客に売上の3割を依存している。この2割の顧客の景気が悪くなったらどうなるのだろうか。売上の8割を依存している顧客企業が赤字になれば、自社の売上も簡単に半減してしまうだろう。

これまでは、もともとあるマーケットに対してサービスなり商品を提供していけばよかった。需要のあるところに供給していけばよかった。しかし、今はそもそも需要がないため、「需要を喚起する」戦略が営業活動には不可欠となってきている。

顕在化されたニーズに関してはすでに商品・サービスが行きわたっているか、買い控えが起こっている。顧客との関係をしっかり築き、課題のありかに気づかせて、商談に育てていくような活動――つまり、潜在ニーズを発掘する施策が必要となったのだ。

これまでの営業はそんなことをやる必要もなかったし、現在やってもいなければ、過去に経験したこともない。だからといって手をこまねいていれば、短期的には良い波が断続的に訪れることはあっても、長い目でみればジリ貧は免れないであろう。

最後に残された聖域としての営業現場。その改革を今こそ行い、ブレークスルーする必要がある。

営業マンの能力を無視した非効率な営業活動を続けている

営業改革の本質に迫る前に、営業現場の実態はどうなっているかをまず考えてみたい。多くの企業では問題意識がありつつも、「手をつけられない」「どうやって手をつけていいのか分からない」というのが本音ではないだろうか。

営業現場にありがちな問題について、一つひとつ確認していこう。 まずは、営業マンの負荷が多大であることが挙げられる。例えば、個々の営業マンは現場を統括する営業マネージャーから「目先の数字を上げよ」といわれる。その一方で、その上の上司からは「将来の売上を確保するよう、見込み客へのフォローを充実させよ」といわれる。ある意味で、相反することが要求されるのである。

「営業とはそういうもの」という考え方もあるだろう。しかし、実はこうしたことは非常に達成が困難でもあるのだ。そのため、「できる営業」と「できない営業」とに極端に分かれてしまう。短期も長期も同時にこなせる、ごく一部の営業マンが「できる営業」として課や部を引っ張っているというのが、多くのBtoB企業における営業現場の実態ではないだろうか。

営業マネージャーはCS(Customer Satisfaction:顧客満足)が大事だというが、個々の営業マンにしてみれば数字になるかどうかも分からない客先へは行くわけがない。すべての顧客のCSを同時に引き上げていくことは極めて難しく、営業成績によって社内における自己の存在価値が上がると信じる営業マンが、目先の数字を追いかけることに全力を注ぐのは当然といえば当然である。

一方で、上から言われるままに売れそうもない顧客に無意味な訪問を繰り返したり、逆に押し込み営業を行ったりしたものの数字にはつながらず、非効率そのものの活動を展開する営業マンもいるだろう。こうした状況があるために、営業マン自身が不完全燃焼に陥ってしまうことも少なくない。

会社側としては、売上目標を達成しつつ、CSを向上させねばならず、なんとかもっと効率的に営業活動を行いたいと思うところだろうが、それとは真逆のことが現場では起こりがちなのである。

現場を把握しない管理職が営業リソースを無駄にしている

営業の業務は基本的に、販売計画立案、提案書の作成、顧客訪問、提案・見積もり、受注・成約、アフターフォローまでを、一人の営業マンが一手に引き受けていることが多い。

まずは販売計画を立案する。大企業であれば営業企画部門が担当する場合もあるだろうが、大きな方向性は示されるものの、実際の現場の行動計画まで決められることはない。良くても営業の部署単位で行われる程度であり、基本的には現場の営業マンが個々人で考えて行動する。

まず行うのは、「市場分析」「ターゲティング」「顧客リストアップ」などの顧客戦略立案である。次に、見込み客にアプローチして電話口でキーマンを紹介してもらう。そのキーマンに自社の強みやサービスの案内を行い、訪問のアポイントを取る。そうして引き合いを獲得するためには、対面営業で現状のヒアリングを行い、課題を見つけ、潜在していた顧客のニーズを顕在化させることが必要となる。

その後、やっと提案できるようになった段階で提案書を営業マン自身で作成する。見積書も作成し、プレゼンテーションを行い、ようやく「じゃあお願いしようか」との内示を得るに至る。内示をもらったあとに価格交渉に入るが、ここでも「もう少しどうにかならないか」と顧客から要望があがったりする。

値下げ交渉を持ちかけられると、今度は社内を駆けずり回って調整を試みる。けれども細かい事情を解さない上司は、「安くするなら誰でも売れる。価格で売る営業なんて営業じゃない」などと言う。そう言われながら価格を決定し、やっとのことで契約にたどりつく。

契約を結んでもそれで終わりではない。納期が遅れるとなれば顧客に事情を説明し、謝らなければならない。その後も、場合によっては売上伝票を作成したり、請求書を送付したりといった段取りまで、担当営業が引き受けているケースもある。これらのことを個別の案件ごとに同時に進行していくのだ。

こうした忙しい状況で、短期と長期、いずれの売上も追いかけようとすればするほど、営業にまつわる作業を一手に引き受けることになる。多くの場合、どこかで歪みが生まれてしまって結果につながらない。そうして営業マンたちが疲弊していくのである。

こちらのコンテンツはこの書籍から抜粋しております。

書籍名:ハイブリッドセールス戦略法人営業部隊の刷新 著者:吉田 融正

1983年東京理科大学経営工学科卒業後、日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。営業課長、営業部長、副社長補佐を歴任する。1994年米国IBMに出向し、コーポレートストラテジー、PCカンパニーへ配属。1997年米国シーベル・システムズに入社し、日本シーベル株式会社の設立に参画。取締役営業本部長に就任。2002年1月ブリッジインターナショナル株式会社を設立し、代表取締役社長に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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