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創業時の想いを忘れてはならない! 長寿企業こそ徹底したい“企業理念”の社内周知

著者:GMCブランド戦略室

事業承継――創業者の想いを引き継ぎ、長く愛される会社になるためには欠かせません。しかし、このタイミングで理念や創業者の思いがしっかり共有されていないと、会社の業績は悪化の一途を辿ることに……。長寿企業として成長していくために、果たしてどんなことに気をつけたら良いのでしょうか。

事業承継のタイミングこそ企業は倒産リスクに晒される

会社が長く続いていくには「事業承継」あるいは「事業継承」をしなければなりません。社長がどんなに優秀であろうとも、後継ぎを見つけないことには会社は存続しないからです。 ところで「承継」と「継承」には違いがあることをご存知でしょうか。

「承継」とは「前の代からものを受け継ぐこと」を指し、「継承」とは「前の代からの身分や仕事、財産などを受け継ぐこと」とされています。

ほとんど同じではあるものの、前者は「理念や思想」など抽象的なものを含めて引き継ぐことを意味し、後者は「理念や思想」よりも「経営権」など具体的なものを引き継ぐ場合に使われるケースが多いようです。

先代の理念や思想を大切にしたうえで事業の発展を目指していくには「事業承継」が欠かせません。しかし、きちんと事業承継を済ませるためには「経営理念の確立と浸透」、すなわち創業者の思いをしっかりと社内に浸透させることが必要です。

例えば室町時代に創業し、現在に至るまで和菓子界の最前線を走っている「とらや」は、「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」という経営理念を500余年もの間ずっと守り続け、多くの人々に愛されています。

後継者だけではなく全社員が理念のもとに同じ方向を見つめているからこそ、長寿企業となっているのでしょう。

創業時の理念が浸透しなければ、企業と社員は指針を見失う

2015年に起きた大塚家具の“お家騒動”を例に挙げて見てみましょう。創業者である先代は、会員登録をした「お得意様」の来店客のみをマンツーマン方式で売り場に案内するという、他の家具店にはないスタイルの高級家具販売方式を貫いていました。ところが長女が二代目を譲り受けると一転。

会員方式をやめ、どんなお客でも自由に店内に出入りして買い物ができる大衆店方式へと大きく方向を変えたのです。これまでのビジネスモデルを完全否定された先代は会長命令で社長を更迭しようとするなど、世間を巻き込んだ騒ぎとなりました。

おそらく先代は「事業承継」できるものと考え社長の座を退いたのでしょう。一概には言えませんが、そこでしっかりと会社や自身の意志を伝えられていれば起きなかった問題だったかもしれません。

親子間での事業承継に成功した例も見てみましょう。電子部品を製造している「アルプスアルパイン株式会社(旧・アルプス電気)」では、創業者である片岡勝太郎氏が息子の政隆氏に社長の座を譲る際、7年間のマネジメント修行期間を設け、以降14年間、会長(先代)と社長(息子)の二頭体制のもとで会社の発展を担ったそうです。

そして三代目に引き継がれた今も、さらに勢力をのばしています。 いかに時間をかけて理念を伝えることが大切かを実感する例です。

周年のタイミングはチャンス! 社史・周年史は淡々と制作してはならない

しかし、会社が大きければ大きいほど、また、社員数が多ければ多いほど、会社の理念や創業者の思いを浸透させることは難しくなっていきます。どんなに日々の朝礼で理念を唱和したところで、それはただの「音読」にすぎない可能性もあるのです。

多くの企業は周年を迎えるタイミングで社史や記念史を制作すると思いますが、ずばりこの制作にこそチャンスが眠っています。以下の2社の事例をもとに、その大切さを紐解いていきましょう。

食用米油(こめ油)を中心に、医療品・化粧品素材を開発するオリザ油化株式会社は、75周年を記念して『その「サラダ油」をやめれば健康寿命はのびる』を出版しました。

同社の主力商品である米ぬかを原料にした「こめ油」は腸の働きを良くする食物繊維や動脈硬化予防が期待できるガンマ・オリザノールなど、豊富な栄養素が含まれているにも関わらず認知度が低かったのです。

しかし、書籍の出版によりメディアに注目され、こめ油ブームが起こりました。さらに80周年には記念誌を制作し、いかにこめ油の成分が優れているのかを社員に向けて伝えることに成功しています。

企業理念は社員のモチベーションを高める武器になる

理念を伝えることさえできれば、社員が増えても社長が代替わりしても、長寿企業として成長していくことが可能です。例えば室町時代に創業し、現在にいたるまで和菓子界の最前線を走っている「とらや」は「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」という経営理念を500余年もの間ずっと守り続け、多くの人々に愛されています。

この理念が言葉として社内に浸透し始めたのは1985年頃とされていますが、それよりもずっと前から、社員の間では同じようなフレーズが使われていたそうです。

後継者だけではなく全社員が理念のもとに同じ方向を見つめているからこそ、「とらや」は世界でも稀有な500年も続く長寿企業となっているのでしょう。

理念をわかちあうことはすなわち、社員のモチベーションアップにもなるのです。それではここで、創業100周年を記念して書籍を発行した「飛騨産業株式会社」の例も見てみましょう。

実績やノウハウは資産! 長寿企業であることはリブランディングと業績向上に

飛騨産業株式会社は、岐阜県高山市に本社を構える家具メーカーです。書籍はおもに広告効果を狙うために出しますが、飛騨産業が刊行した『よみがえる飛騨の匠』ではターゲットを経営者やビジネスマンに絞り、地場産業を復活させるノウハウ書形式にしました。

日本の各地で多くの地場産業がなくなっていくなかで、飛騨産業が長寿企業として生き残るためにやったことを紹介することで、飛騨産業で生まれた製品を消費者に買ってもらうことに成功しています。

ノウハウ書でありながら、こういったムーブメントが結果的には代表取締役社長である岡田贊三氏の経営手腕の認知向上につながり、テレビ東京「カンブリア宮殿」への出演も決定。

さらには飛騨産業が経営している家具職人の養成学校「飛騨職人学舎」への入学者数も増えたといいます。

このように、周年を機にしっかりと会社の理念を伝えるツールを制作することで、社員は「自分たちが作っているものがどれほど素晴らしいのか」ということに改めて気づくことができます。また、それは会社で働くうえでのモチベーションアップにもつながるでしょう。

しかし、創業者の思いを大切にするだけで変化を恐れているようではいけません。例えば先述した「とらや」で17代目を務める黒川光博社長は「伝統は革新の連続である」と言い、周囲の反対を押し切って店内に羊羹の自販機を設置するなど多くの変革を実行してきました。

技術や環境は変わっていくものですから、そこに対応することはもちろん大切です。しかし、その背景には「変わらない理念」が、蓄積されてきた「ノウハウ」や「実績」があります。それらを大切にすることこそが、長寿企業として成功していく秘訣なのです。

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