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【連載第1回】企業の持続的成長に必要不可欠な「CSR」と「サステナビリティ」とは

著者:細田 悦弘

企業には、「事業を継続させ、持続的に成長させていく」という社会的使命・責任があります。この使命・責任を果たすうえで欠かせないのが、「CSR」と「サステナビリティ」に対する理解です。今回は、この2つの概念から現代の企業活動に求められるものを考えていきます。

しっかりと把握している人が実は少ない! 「CSR」と「サステナビリティ」の違い

「CSR」と「サステナビリティ」という言葉は、ビジネスパーソンの間ですっかり普及・定着してきました。しかし、CSRや経営企画に関わる部署に所属していても、「CSR」と「サステナビリティ」の違いを明確に理解している人はあまりいません。

CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、通常「企業の社会的責任」と訳されます。「責任」という言葉が入っているため、義務のように受け止め、事業への大きな負担のように感じてしまう人もいるようです。 しかし、それはCSRのことを取り違えています。CSR の「R」であるResponsibilityは、response(反応、対応)とability(力、能力)から成っています。CSRの根幹にあるのは、“対応”。「企業の社会への対応力」がCSRの本質です。

現代社会では、ニーズや価値観が目まぐるしく変化しています。こうした変化を感性鋭く捉え、変化に対応して、時代にふさわしい価値を提供するのがCSRなのです。 企業の経営層からも「CSRでメシが食えるのか」といった発言を聞くことがありますが、まったく逆。CSRは社会の変化に対応する力ですから、「CSRをないがしろにしているとメシが食えない」のです。

このCSRと密接に関係しているのが、サステナビリティです。 サステナビリティ(sustainability)は、通常「持続可能性」と訳されます。20世紀後半は「膨張の時代」といわれ、経済規模が凄まじいペースで拡大し、過剰消費、過剰排出の時代を招きました。このままでは環境、社会への負担が大きく、成長の限界を迎えるのが明らかになってきたため、サステナビリティ(持続可能性)に注目が集まりました。

CSRとサステナビリティは、似たような言葉に思えるかもしれませんが、位置付けが異なります。企業は「CSR(社会対応力)」を経営に組み込み、現代社会の共通の価値観である「サステナビリティ」を希求します。CSRを手段とし、サステナビリティを実現するのが現代の企業なのです。

企業理念とCSR、サステナビリティの3つが永続企業をつくるカギとなる

会社を経営するうえでの経営者の強い思いが「企業理念」です。経営にあたり、何が正しいかという人生観、社会観、世界観に深く根ざしたものであり、価値観、判断基準、道徳観、倫理観も反映されます。企業理念は、企業の「社会との約束事」であり、社会における存在意義そのものといっていいでしょう。 この企業理念と、CSR、サステナビリティはどのような関係にあるのでしょうか。

優良企業の企業理念には、おしなべて「社会を幸せにしたい」「社会を豊かにしたい」という趣旨が込められています。ところが、時代とともに社会は変化します。昔ながらの発想でやっていると、良かれと思ってやったことが無価値になったり、挙句の果てにはあだになってしまうようなことも起きてしまいます。

ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のフィリップ・コトラー教授は、「変化に直面した時にとりうる最善の策は、変化を糧にする組織を作ることである」と言っています。企業に即していえば、「時代を味方につける」ビジネスセンスが鍵となります。 ここに、企業理念を実現する戦略としてCSR(社会対応力)を経営に組み込む意義があります。いつの時代にも企業理念を実現するために、CSRによって社会の変化に対応するのです。

ほとんどの企業理念は、社会のために貢献することを謳っています。CSRによって企業理念を実現し、現代社会の共通の価値観であるサステナビリティを達成する。こうしたプロセスにより、企業と社会の利益をその時代の社会ニーズを踏まえて高い次元で調和させることで、企業と社会の持続的な相乗発展が実現できます。

創業の精神と「CSR」をしっかりとつなぐ

変化の激しい今日において、企業がこれから進むべき方向に迷った時にするべきことは自社の創業時に立ち返り、創業の精神を再確認することです。 創業者はさまざまな問題を考え抜き、試行錯誤を繰り返し、情熱をもってチャレンジしてきました。企業理念や創業者の発言などから創業の志や精神に立ち返り、自社の存在意義や事業の軸足を再確認することで、進むべき方向が見えてきます。

しかし、創業の精神は過去において作られたものです。そのままでは現代に実現することはできません。そこで、創業の精神にCSR(社会対応力)を接ぎ木することをおすすめします。 「接ぎ木」は主に果樹や花木で使われる繁殖方法で、「台木」に品種の違う「穂木」を接ぐのが基本的な方法です。生育が旺盛で病害虫がつかない品種を台木として選び、そこに花が美しい品種を穂木として選んで接ぎ木すると、「生育が旺盛で耐病害虫の台木の性質を受け継いだ、たくましく美しい品種の花が咲く」ということです。

創業の精神や企業理念という「台木」の元にCSRという「穂木」を接ぎ木して、時代にふさわしい果実(ビジネス)をたわわに実らせる。これが、これからの永続企業の鉄則です。

次代も輝く企業価値を手に入れよう

創業の精神こそがブランド・アイデンティティー(自社らしさ)の源流であり、競争優位の源泉です。 しかし、創業の精神はそのままでは変化の激しい現代に活かすことができません。CSRで創業の精神を現代に活かし、現代社会の共通の価値観であるサステナビリティに貢献する。このことで、企業は次代にも輝くことができるようになります。

(こちらのコンテンツは書籍『選ばれ続ける会社とは 〜サステナビリティ時代の企業ブランディング』から抜粋しています)

こちらのコンテンツはこの書籍から抜粋しております。

書籍名:選ばれ続ける会社とは 〜サステナビリティ時代の企業ブランディング 著者:細田 悦弘

細田 悦弘
中央大学大学院 戦略経営研究科 フェロー / 一般社団法人日本能率協会 主任講師
1957年、愛知県生まれ。中央大学法学部卒業後、キヤノンマーケティングジャパン(株)入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、同社・CSR本部に所属しながら、企業や大学での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。

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