【連載第1回】働き方改革が浸透すればするほど中小企業が窮地に追いやられるワケ

著者:山本 法史

2019.08.09

売り手市場において、採用した人材が定着せず、厳しい立場にある中小企業が増えています。その原因は企業自身なのか、時代の変化によるものなのか、さまざまな角度から中小企業が窮地に追いやられる原因を解説していきます。

目次

人材が定着しない理由を「時勢」や「ゆとり教育世代」のせいだと誤解している

せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまう──。 確かに昨今、人材がますます流動的になっており、採用した人材が辞めてしまったとい う相談が増えています。 当たり前のことですが、人材を採用するのにはコストがかかります。さまざまな媒体に 募集を出すにしても、決して安くはない投資を行うわけです。コストをかけてようやく採 用できた人材が、期待に反してすぐに離職してしまうとなれば、辞めていった社員を責め たくなる気持ちも分からないではありません。

特に最近は、「ゆとり世代」が大学を卒業し社会人としての一歩を踏み出していますが、すぐに離職してしまうのをゆとり教育のせいにする経営者が多いように思います。 しかし、企業が成長していくためには、社員を雇って育てていくしか道はありません。 人材が定着しない原因を辞めていく社員のせいにするのは簡単ですが、それをしたところで何も変わりません。経営者であれば人材の採用と育成から逃れることはできないのです。

「辞めても次の職場がいくらでもある」売り手市場は中小企業にとって逆風でしかない

就職が「売り手市場」といわれる昨今。中小企業の経営者にとっては、厳しい採用環境 が続いています。

私のもとには、中小企業経営者の実にさまざまな「人材についての悩み」が寄せられて きます。そしてその悩みは次第に増えているのが現状です。 学生にとっては中小企業よりも名の通った大企業のほうが魅力的に映ります。求人を出 しても大企業に取られてしまって応募自体が少なく、大企業に対抗しようと賃金をアップ しようとしても大企業並みの賃金水準を維持することは到底できません。

求人募集をさまざまな媒体で展開しても思うように集まらず、コストだけが膨らむというケースは実に多くあります。さらに、ようやく採用がかなってもなかなか戦力にならないうえに、すぐに辞めていってしまう。採用できたとしても定着しないのです。

このような現象が起きる原因は、「辞めても次の職場がいくらでもある」という売り手市場ならではのマインドであるといえるでしょう。求職者からすれば、待遇や環境の悪い中小企業で我慢して働き続けるよりも、より良い条件を提示してくれる企業に移りたいと考えるのは当然でしょう。 このように、売り手市場は中小企業にとっては逆風でしかなく、加えて「働き方改革」がその逆風をさらに強くする結果になっています。

平成28年、安倍内閣は「一億総活躍社会」実現のために「働き方改革」を打ち出し、労 働者に対して、一人ひとりのニーズにあった、納得のいく働き方を実現させようとし、例えば残業時間の上限を罰則付きで設けようと議論しています。

しかしながら残業時間の制限は、多くの中小企業にとっては現実的ではないでしょう。 そもそも慢性的な人材不足に陥っているなかで残業時間を制限してしまっては、やるべき仕事が終わらない。顧客に迷惑をかけて売上が減ってしまう……。そう考える経営者が大半のはずです。

働き方改革は企業に対して「労働者のニーズを満たしなさい」と通達しているのと同義です。しかし、そもそも人手不足の中小企業が「労働者のニーズにあった働き方」をさせることなど、到底できません。

また、中小企業は大手企業とは異なり、人事部がないことがほとんどです。人事や採用 に特化した人材がいないなかでどうすれば人材が定着するのか、多くの経営者が悩んでいるのです。

大手との労働条件格差の拡大により、人材採用はいっそう過酷になる

売り手市場のなか、人材の争奪戦は激化する一方です。優秀な人材をほかの企業に取られないように、また、働き方改革が待ったなしの状況に後押しされ大手企業は次々と新たな施策、斬新なアイディアを打ち出し、メディアをにぎわせています。

残業時間を制限する動きにとどまらず、終業時間と翌日の始業時間までの間を一定時間確保する「インターバル制度」を設けようという大企業も出てきています。 このままでは大企業と中小企業の労働条件の格差は拡大する一方であり、それが中小企業の人材採用の困難さに拍車をかけていくことでしょう。

しかしながら、大企業であっても危機的な状況に陥っている企業もあります。ですから中小企業だからといって人材の確保を諦める必要はありません。

中小企業には、大手のようなブランド力はありません。しかしながら中小企業ならではの機動力で、働く人に中小企業ならではのやりがいを求められるような職場であることを情報発信していかなければならないのです。

こちらのコンテンツはこの書籍から抜粋しております。

書籍名:経営者が知らない 人材不足解消法 著者:山本 法史

社会保険労務士法人山本労務統括代表社員。 特定社会保険労務士。 専門分野は「企業の残業代対策」「効率的な人事制度・組織制度の構築」「社会保険料と残業代の予算化」とそれに対応した「賃金制度」「労働時間管理制度」の立案及び運用。500を超える企業、団体の顧問を務め、のべ1000社以上の相談を受けてきた、20年以上の実績を誇る人事労務のエキスパート。著書に『社長!残業手当の悩みはこれで解決!』(現代書林)がある。

この記事をシェア
Beyond Publishing

サービス案内資料のご案内

弊社サービス内容を知りたい方は以下フォームよりサービス案内資料を
ダウンロード頂き、ご参照ください。

資料ダウンロードはこちら

お問い合わせ・資料請求

ご不明な点や企業出版のご相談は、こちらからお気軽にお問い合わせください。

TEL03-5411-6440

平日 9:30〜18:00(年末年始・GW・夏季・冬季期間を除く)

資料請求・お問い合わせフォーム

無料お見積もり

お客さまの求める課題解決の内容によって、制作費用は異なります。
まずはお気軽にご相談ください。

お見積もりはこちら