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幻冬舎社長対談
見城徹(以下、見城) 幻冬舎メディアコンサルティング(以下、GMC)が設立してから、もうずいぶん経つよね。
久保田貴幸(以下、久保田) 2020年6月に設立15年目を迎えまして、これまでに私たちが手がけた書籍は2,000タイトルを超えました。
見城 いまでこそ追随する出版社も出てきているけれど、「書籍の出版を通じて企業のブランディングを支援する」というビジネスモデルは、設立当時はまったく新しいものだった。
久保田 確かにブランディング出版は、「本を出すことが目的の出版」ではなく「クライアントの事業を発展させることが目的の出版」という点で、旧来の出版社にも、PR支援に特化した企業にも考えられなかったモデルでしょうね。
見城 適切なテーマ設定で読者を獲得し、その潜在ニーズを呼び起こして最適な解を示す。出版社の本作りでは当然のことだけど、それが結果的に、クライアントにとっても完璧なマーケティングとなることに気づいた。単に一冊の本を作るだけではなく、クライアントの「伝えたい」想いを読者の「知りたい」内容に変換していく企画・編集力、書籍を知らしめる広告宣伝力、全国4,000店舗の販売特約書店への流通力といった幻冬舎の3つの強みを最大限活用してきたことで、GMCがここまで実績を積み上げてこられたのだと確信しているよ。
見城 GMC15年の歴史の中では、クライアントの集客モデルを変革させてしまうほどの大きな効果のあった書籍が多く出ているよね。いずれの本も、ターゲットとなる読者の知りたいこと、悩んでいることを幻冬舎の培ったメソッドで的確に捉え、その解決策を書籍ならではの圧倒的なボリュームで提示している。どれも読者にとって「待望の一冊」になっているところに、出版事業としての大きな意味を感じているよ。
久保田 読者の共感を得た先にこそ、集客や採用、インナーブランディングといったクライアントのゴールの実現があると信じています。書籍の刊行にあたっては、ターゲットとなる読者は誰か、そのターゲットが真に求めている情報は何か、そしてクライアントの持つソリューションで何をどう解決できるのか、社会情勢や市場動向、書店の購買データなども駆使しながら企画を徹底的に練り込み、それぞれ覚悟の一冊として世に問うています。
見城 だから必ず結果が出る。武蔵コーポレーションが最初に出した本は、2012年の『年収1000万円から始める「アパート事業」による資産形成入門』だけど、出版まもなく30件以上の受注を獲得したと聞いている。書籍としてまず良質で、読者のニーズを強く喚起し、そのソリューションを明解に提示している。読者の理解・共感が先に実現するから、結果的に購読をきっかけとして問い合わせに至るPULL型集客モデルの確立にもつながった。同社は以後、不動産投資の新刊書籍だけで4冊も刊行しているんだよね。
久保田 はい。2013年に『空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』、2014年に『会社の経営安定 個人資産を防衛 オーナー社長のための収益物件活用術』、2016年には『利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50』、そして2019年には『一級建築士が教える 買ってはいけない収益物件の見分け方』を刊行しました。最初の3冊は改訂版も出版し、書店の関連コーナーに同社の書籍がズラリと並んでいるケースも珍しくありません。
見城 情報収集への意欲が強い人々が集まる、書店をうまく活用して成果を上げている事例だよね。新作を出し続けることで情報を常にアップデートし、社会情勢の変化とともに少しずつ変わる「読者がいま最も知りたいこと」をタイムリーに提供できているから、1冊目で確立したPULL型の集客モデルがいまも完璧に機能しているのだと思う。
久保田 クライアントの大谷代表からは、「やはり書籍は読み手の理解深度が違う」というお言葉もいただいています。商談もスムーズに進むケースが多く、それが受注増に直結しています。
見城 同社は新卒採用向けの書籍も2冊刊行しているけど、『大企業は20代でやめなさい』など、幻冬舎が得意とする、強烈なメッセージ性を持つタイトルになっている。著者の熱い想いを読者に「強く」「深く」伝えられるという点で、ブランディング出版がこれまでのプロモーションや採用広告と一線を画していることが分かる例だね。
見城 もうひとつ強く印象に残っているのは、医療法人社団トータルアイケアの取り組み。2016年に『目は若返る 50歳からの眼科治療』、2018年に『スゴイ白内障手術』、2019年には『年間1500件の白内障手術を手掛けるスゴ腕ドクター佐藤香院長の白内障治療Q&A』を刊行した。本格的な高齢化社会を迎え、加齢に伴う目のトラブルに悩む人は確実に増えている。治療や手術の失敗が許されない目の話だけに、本物の専門家から正しい知識を学びたいという人々の思いは強い。その切なるニーズに見事に応えることができた、社会的にも大きな意義のある出版だと思う。
久保田 クライアントの出版目的は、白内障手術のスペシャリストとしての著者・佐藤院長のブランディング、そして白内障手術を求める患者の集客ですが、何より書籍として読者の期待に応えることを第一に企画・編集しました。結果、1冊目の出版直後から読者の来院が始まり、現在では毎週、数名から十数名の方が「本を読んだ」ということで来院されるそうです。
見城 「他院に通院中だけど、佐藤院長に診てほしい」という患者さんも多いんだよね。
久保田 白内障手術のスペシャリストとしてのポジションを確たるものとしています。本の出版をきっかけとしてTBS系『林先生の初耳学』、日本テレビ系『ミヤネ屋』といったテレビ番組への出演も実現し、そのブランディングには拍車がかかっている状況です。
見城 媒体の信用力という点でも書籍は抜群だからね。テレビ局側も専門家として誰をキャスティングするか、常に頭を悩ましているだろうし、3冊もの書籍の著者という存在はやはり強い。1冊目の出版時点では、ご本人にも有名テレビ番組に出演するというイメージは明確にはなかったはずだが、結果はこうなった。ブランディング出版がクライアントに無限の可能性を生み出したということを示す好事例だと思う。
見城 幻冬舎グループの中で、GMCほど己の哲学と向き合い、挑戦し続けている会社はないよ。いろいろな矛盾を抱えながらも、毎年アウフヘーベンしているからね。……アウフヘーベンはなんと言えばいいのかな。日本語でいうと、「止揚」という言葉になるけれど、それもまた違う。矛盾をらせん状に乗り越えていくというか、大きな矛盾をはらみながらも前に進むというか。ブランディング出版には、クライアントの伝えたい想いをいかにして、読者の知りたい内容に変換するか、最良の本を出すために研ぎすまされた編集感覚が必要になってくるけれど、GMCは紆余曲折しながら、着実に成果を出している。
久保田 ありがとうございます。でもやはり、いろいろなことがあるなかで、日々模索しているところもあります(笑)。
見城 それは大事なことだよ。憂鬱でない仕事、葛藤のない仕事なんてないのだから。楽な仕事はたいした結果につながらないわけでね。
久保田 出版業界はもちろん、他業界もいまは厳しい時代にあると思います。だからこそ私たちも一冊一冊に全力投球をし、出版の効果を創出していくことでこのビジネスを拡大していきたいと思っています。
見城 ブランディング出版がこれからも新鮮な驚きを与えてくれることを期待しているよ。
【了】