事例
TV出演や講演依頼が殺到。老舗家具メーカーが実感した「書籍出版」の驚くべき効果
飛騨産業の創業は1920年。100年の歴史をもつ木工家具メーカーです。飛騨の伝統的な木工技術や独自に開発した加工技術を駆使し、商品を世に送り出してきました。高度成長期の売上は60億円を超えていましたが、バブル崩壊後は輸入家具のブームも相まって収益が半分以下まで落ち込み、廃業寸前まで追い込まれていました。
そんな折、経営立て直しの依頼があり社長就任を決意したのが2000年。翌年から 「家具作りは、森林づくり。国産材で地域を守っていく」という理念に基づき、「販売戦略」「製品開発」「生産体制」「後継者育成」「ブランディング」「地域プロモーション」の6つの改革に取り組みました。
これらのエピソードをもとに2017年に出版したのが書籍『よみがえる飛騨の匠』です。書籍を出したあとはTV『カンブリア宮殿』の取材や講演依頼などが殺到するなど、想定外の反響も起こりました。
書籍出版後、TV『カンブリア宮殿』から取材依頼が。
作家・村上龍さんが司会を務める番組『カンブリア宮殿』から取材依頼があったのには驚きましたね。しかも村上さんが弊社の椅子に座って「立ち上がりたくない椅子」との言葉で褒めてくれたんです。番組の反響は予想以上で、椅子の売上が前年対比2倍も伸びました。
また、書籍を通じて、地元高山の資源と伝統の木工技術を有効活用している私たちが、トヨタ生産方式を取り入れた工場の改善を行ったことにより、圧倒的な効率化と職人技の平準化を成し遂げるまでを伝えられたことにも満足しています。今でも、書店にある書籍を読んだお客様から反響が届くことがあります。書籍の長い影響力を感じますね。
文中では、自治体と共に森を守る活動を行ったり、次代を担う若者を育てる教育システムをとりいれたりと、地域を盛り上げるための取り組みについても紹介しています。
また、過度な競争に巻き込まれない、潤沢な資源、地域との連携など、地方ならではの資源や環境を有効活用することが、地方の中小企業が生き残る道だということもわかりやすく伝わるよう書きました。
「書籍を作ってる余裕なんてあるか!」と思ったけど、反響と売上を考えたら大正解でしたね(笑)
はじめに書籍を作ろうと思ったきっかけはシンプルです。「ウチの会社にはこんな長い歴史があるんだよ。会社が描いているビジョンはこれだよ」と社員に理解してもらう。それだけのためでした。
正直言って事業で忙しく、書籍を作る状況ではなかったのですが、幻冬舎さんの熱意もあり、悩んだのちに出版を決意しました。結果としては、反響と売上を考えたら、本当に書籍を作って良かったと思います。最初は高いかな…と思いましたが、書籍を通じて社員たちは理念を理解してくれましたし、大正解でした(笑)。
書籍出版は「事業を次世代へつなげる」手段になる
なんだか気恥ずかしくて、自分から「ウチの本だよ!」と渡すことができずにいましたが、どうやら社員が積極的にお得意様に配ってくれていたようです。書籍を読まれたある企業の方が弊社を気に入り「今まで家具を頼んでいたところをキャンセルしてお宅に全部任せたい」というかなり大きなオーダーもありました。ありがたいことですね。私の友人が書店で見つけてわざわざ連絡をくれたこともありました。
出版後は講演会の依頼もいただくようになりました。内容は書籍にまとめたことがメインです。講演をすることで自社の宣伝になるのですから、こんなうれしい相乗効果はありませんね。
TV出演によって家具が売れたことはもちろん、書籍の出版によって会社のランクが1つ上がったと感じています。信頼性を高め、認知度を向上させることは自社ブランディングの要ですね。
ちなみに、地場産業の匠のワザを後世に残そうと、7年前より養成学校も立ち上げました。100年の歴史を持つ技術を現代のニーズにどう合わせるか……新しいことにチャレンジし、試行錯誤の日々です。改革をしたからといってすぐに会社がうまくいくわけではありませんからね。3年、5年、10年と少しずつ地道な変革の繰り返しですが、その過程において書籍も重要な役割を果たしてくれたと思います。