1. サブスクの解約防止サービスの認知向上のため出版
当社は創業5年目になるウェブ広告代理店であり、今年3月に東証マザーズへの上場を果たしました。アフィリエイトと呼ばれる成果報酬型のビジネスモデルで、カード系や信販系、健食などさまざまな商品を扱い、販売促進へと導いています。 現在は「サブスクリプション」(消費者が「一定期間の利用権」に料金を支払い、商品やサービスの提供を受けるビジネスモデル)の解約防止サービスが事業の柱なのですが、認知度の向上と信頼性の醸成が課題となっていました。そこで、新しい時代のマーケティング本として『解約新書』を出版することに決めたのです。
2. 思いがけずAmazon1位獲得!
自社事例以外にも失敗・成功例を取り上げたことが功を奏した
書籍を出したら、なんとAmazonの「マーケティング・セールス全般関連書籍」売れ筋ランキングで1位を獲得しました。これは想定外の反響でしたね。正直なことを言うと、そうなった後の対応をまったく用意してなかったので、事前に想定していればもっといいプロモーションができたかもしれません(笑)。 書籍ではサブスクリプション・ビジネスの解約シーンに着目し、自社で扱っている事例だけでなく、様々な「失敗したサービス」「成功したサービス」を取り上げたので、サブスクリプション・ビジネスに興味を持ってもらえたのかな。結果として、弊社の事業内容を明確にアピールできた印象があります。 もう一点意外だったのは、私自身が「サブスク解約のスペシャリスト」として世の中に出ることができたことでしょうか。「書籍を出している人」というだけで信頼性が高まり、メディアも取材をしやすくなるのか、サブスク解約に関するインタビューやセミナーも増えました。ここに、書籍出版の一番の効果を感じています。 インタビューを見たイベント会社などから、「現状のコロナ禍で苦境に立っている。うちと結びつけて一緒にコラボレーションできないか」といったオファーが増加しているのです。
1冊目の反響を受け、2冊目ではWeb接客ツール「Robee」のブランディングを目的とした出版をいたしました。
▲「解体新書」になぞらえたキャッチ―なタイトルに。2冊目では、市場調査を踏まえ「Webマーケティング」というワードで読者の目線を奪い、Web接客ツール「Robee」の名前を帯コピーに挿入することでブランディング効果を図った。
▲サブスク市場を客観的に分析した結果を掲載し、市場でのサービスの立ち位置を明確にさせた。
3. 財閥系は読書好きが多く、本の価値を知っている。
一気に信頼を高めることができるマジックツールですね
これまでのクライアント像とはまったく違う、トラディショナルな会社からの問い合わせが増えましたね。たとえば、造船業の会社の役員の方が読んでくださって「情報交換しませんか」とご連絡があったり、保険会社や金融関係などからもご相談を受けたりしました。財閥系の方は基本的に読書がお好きな人が多いので、書籍への信頼度が高いんですよね。 解約防止サービスに興味を持った保険会社の方から「解約防止ができるなら契約はもっと簡単にできるでしょう?」と言われたのは面白かった。契約のところで弊社のサービスを使用する話に発展しました。書籍出版で新しい視点を得た一例です。 コロナ禍の影響で、様々なビジネスが変化を必要としました。顧客に対し、定額の徴収から利用料などの徴収に切り替える業態が増加し、その中で、解約だけではなく出金防止や退会防止など様々なお問合せもいただきました。 つまり、書籍を作ったことで信頼度が増し、さまざまな業界に「解約防止」の認知度を高めることができました。事業発展に拍車がかかったということです。 書籍で「どんなサブスクリプション・ビジネスも、ユーザーの離脱という宿命からは逃れることができない」と述べました。サブスクビジネスにおいて深刻になっている「ユーザーの離脱」について、企業側の考えるべき方策を丁寧に解説したのです。今利用している人たちを大事にしていき、解約希望者を引き止める手段を講じる必要があると。「新規獲得ばかり力を入れていた。こんな当たり前のことが抜けていたなんて」との声も多数聞き、書籍を作った甲斐があったと思いました。
▲認知度を高める施策として日経新聞に半五段広告を掲載。ビジネス系媒体やIT・マーケティング関連媒体にプレスリリースを送付。
4.出版を検討している企業へのメッセージ
そもそも出版の目的としては、会社や個人のブランド価値を高めたいということがありました。IT企業というのはどこか「悪者みたいな見られ方」といいますか、「薄っぺらい」とか、「何をやっているかわからない」とイメージされがちなんです。書籍はそれらを払拭する説得材料になると思っていました。 もちろんウェブ記事や広告などを用いたアピールも考えましたが、どちらも一過性のものですからね。書籍は長い時間残って、使い続けられるというメリットがあった。 当たり前の話ですが、スマホで撮った写真を「見せて」と言ったとき、そのほかの写真は見られませんよね。でも本のアルバムだったら、その人がどんな人なのかが瞬時に伝わります。書籍はアルバムと似ていて、「書籍を読む=会社全体を見る」ことになる。すると、見せられた側は、「そういうことができるのか。うちでも頼もうかな」という感覚になるのです。これが書籍の強みですね。弊社のサービスをウェブで広告しても、「写真1枚見て」と言ってるのと同じになってしまいますから。 書籍を活用した営業をしていますし、実際に書籍を読んで相談に来る方もいます。会社や個人に“箔”をつけてくれるだけでなく、信頼へとつなげてくれるではないでしょうか。大変ありがたいツールだと思っています。
編集者の視点
●サブスクリプション・ビジネスの解約シーンに着目。様々な「失敗したサービス」「成功したサービス」を取り上げた。
●これまで知られていなかった「人はなぜ解約するのか」について、学ぶことができる一冊に。