引き出しにしまわれたままの南京錠が、
過去への扉を開く。親子三代、100年の物語。
――1972年の夏、ボクとおじいちゃんは、「かぞく」を探す旅に出た。
商いの町・大阪を舞台にした100年にわたる金物卸商の事業承継。
「かぞく」愛あふれるファンタジー経済小説。
大阪船場の商人文化、戦後の沖縄復興、バブル経済の終焉……と
激動の近代日本を駆け抜けた、実在する老舗企業の歴史を映画脚本家が小説化。
大阪の老舗金物卸商の二代目社長であった父・松倉充太郎が亡くなった。
充太郎を見送るため、息子の三代目社長、将は告別式の喪主を務める。
葬儀当日、将は充太郎の引き出しから、ずしりと重い南京錠を見つける。
しまっていた理由を知る者は、いまとなっては将ひとりだ。
「長いこと隠しててすんません、充太郎さん」と、将は心のなかで父に詫び、
自身の胸ポケットに南京錠を収めると、ふいに将の心に遠い昔の記憶が蘇る……。
1972年、日本に沖縄が返還されたその年。
11歳の将は、小学校の担任に反発して不登校となり、
家業の金物卸商「マツ六」創業者である祖父・六郎の家に丁稚奉公することになる。
ある日、納戸の修繕をしていた六郎がよろけて頭を打った。
六郎は病院から帰ると、これまでの人生でやり残したことを清算するため、
突然旅に出ることを決意する。
心配した家族が六郎の旅のお伴に選んだのは、なぜか孫の将だった。こうして、これまで孫に向ける愛情を持たなかった老経営者と、
小学生の珍道中が始まる。
旅を通じてぎこちない二人の間に徐々に生まれる絆。
だが、祖父と将の父親には、経営者と跡継ぎとしての確執があった。
100年企業の祖父、父、子はぶつかり合いながらも会社とかぞくのために奮闘する。
果たして三人が見つけた会社とかぞくのカタチとは……。
商いの町・大阪に実在する建築金物卸商『マツ六株式会社』を舞台に繰り広げられる、
親子三世代の物語。
【目次】
プロローグ
第1章 戸車
第2章 げんこ
第3章 塩ビ管
第4章 マツ六の南京錠
エピローグ
あとがき対談