懸命に生きる子どもたちの人生に寄り添いたい
一人の人間として、友人として――
小児科医と難病を抱えた子どもたちとの物語
本書は、小児科医として難病を抱えて生きる子どもたちと接し、
友人としてふれあってきた著者が、6つの実体験をもとに記したエッセイ集です。
一人のダウン症の少女との出会いから小児科医の道を志し、
40年にわたってたくさんの子どもたちを見守ってきた著者の軌跡が、
人生を明るく生きようとする子どもたちへの温かい想いをこめてつづられています。
著者は小児科医として地域の子どもたちの診察にあたるかたわら、
これまでに3冊の絵本を出版してきました。
著者のクリニックのなかには図書館が併設されており、
子どもたちに読み聞かせのイベントを開くこともあります。絵本を書き始めたのは、
難病を抱える子どもたちと長く接するようになったのがきっかけだといいます。
もともと勤務医として大学病院の小児科で先天異常外来を担当しており、
その後子ども病院勤務を経て、自身のクリニックを開業しました。
そうした経緯もあり、開業にあたっては大学病院で生まれた難病の子どもたちを
広く受け入れようと考えたのです。
難病を抱えている子どもたちには、人生において多くの壁が立ちはだかります。
一人で着替えができなかったり、トイレに行けなかったりと、
常に周りの人たちの手助けがなければ生活できません。そのため健常者からすると、
生きていくのが大変でつらい人生を強いられているように見えるかもしれません。
しかし、そんな子どもたちを生まれたときからずっと見守ってきた著者からすれば、
それは大きな誤解であり、むしろ明るく前向きで、将来に大きな可能性を秘めた
すてきな子どもたちだといいます。彼ら彼女らが自分の得意なことを見つけ、
驚くべき才能を発揮する光景を何度も目にしてきた著者は、
難病を抱えた子どもを主人公にした絵本を書き、同じような境遇の子どもたちに将来に希望をもって生きてほしいと願ってきました。
今回は絵本ではなく、これまで出会った子どもたちが著者に見せてくれた奇跡を
より多くの人に伝えたいという想いから、書籍として文章でエピソードをまとめました。
本書が全国の難病を抱える子どもたちの家族や、関わる身近な人たちの希望の光となり、
子どもたちが自分の人生を輝かせるきっかけとなってほしい、
そんな著者の思いがこめられた、心温まる一冊です。