ウェブ施策、広告戦略、コンテンツ制作・・・ 勢いだけで始めたウェブマーケティングは失敗だらけ

著者:後藤 晴伸

2019.07.12

目次

発注元が茶番劇の舞台を用意してしまう

おざなりな運用しかせずに、営業だけは一生懸命な広告代理店やSEO会社。そんな会社が幅を利かせ、ときにはお客を食いものにする。クライアントは不信感を持ちながらもどうしていいか分からずに代金を払い続ける。これがウェブマーケティング業界の実態です。 こうした自称〝ウェブマーケター〞が存在する一方で、発注する側がこれでは成果が出ないのも無理はないと思うこともたびたびあります。

発注する相手をきちんと選ばない。ウェブやマーケティングについての基本知識がなく、持っている情報が古い。何事も相手任せにして、数字が伸びない原因も考えようとしない。どれもウェブマーケティングをうまく展開できないでいる企業の典型です。

こんなクライアントが、〝ウェブマーケティング〞に名を借りた茶番劇の舞台を用意し、問題のあるウェブマーケティング会社を迎え入れてしまっています。

たとえ独自の商品開発や技術力の向上を追求するのに一生懸命でも、それを売上に結びつけられなければ会社の成長にはつながりません。ところがマーケティングやプロモーションの重要性を認識していない経営者が多いので、端で見ている方が歯がゆい思いをしてしまいます。

ウェブマーケティングを利用して売上を伸ばし事業を拡大するのは発注元の企業で、広告代理店や制作会社、SEO会社などはそのために利用するパートナーでしかありません。まやかしに騙されることなく、自らがウェブマーケティングの主役となって売上を増やしていかなければなりません。 次の項目から私がウェブマーケターとしてこれまで見てきた残念な発注元企業の例を紹介していきます。ぜひとも同じような失敗をすることがないようにしていただきたいと思います。

大手広告代理店に丸投げしても何のメリットもない

まず問題なのは、すべてを丸投げするクライアントです。  よいクライアントとよいウェブマーケターは、信頼関係が深まるほど両者の間でメールが飛び交い、対話のキャッチボールが頻繁になるものです。そしてクライアントは積極的にウェブマーケティングに関わっていきます。

その反対に、丸投げするクライアントは、すべてを発注先に委ねてしまいます。ですから、付け入る隙を狙っているような会社につかまると、いいカモにされてしまいます。

ある企業は、社長同士が知り合いだからという理由でリスティング広告の発注先を決めていました。「どうしても頼まなければならないしがらみがあるらしいんですが、そこの営業の人は言っても動いてくれないし、広告を出していても全然数字が伸びないんです」とウェブ事業部門の社員は嘆いていました。いくらつながりがあるとはいえ、社長が始めから発注先を限定したのでは、コントロールの効かない丸投げ体質になってしまいかねません。

そうかと思えば、「うちは大手代理店のA社にお願いしていますから」と得意そうに、ある会社の社長に言われて返事に窮したことがありました。大手広告代理店に丸投げしていることは、安心材料なのでしょうか。失礼ながら、この会社は大丈夫かなと思いました。

私は大手広告代理店の下請けをしてきたので、その内情をある程度は知っています。彼らが本気になって取り組むのは、大手クライアントによる年間予算が億単位以上のビッグプロジェクトです。最近は中堅どころから下のクラスの比較的予算の少ない案件にまで手を伸ばしていますが、そのためにわざわざプロジェクトチームを組むわけではありません。片手間で適当にやって小金が入ってくればいいという感覚で、まだ経験が浅い人間に任せたりします。

しかも、そもそもウェブマーケティング自体をたいして重視していないのではないかと思えます。  何年か前に私が手がけていた案件が、大手広告代理店にテレビ絡みで持って行かれたことがありました。そのサイトを今見ても、デザインも中身も当時とほとんど変わっていません。片手間でさえ手をかけなくなり、放置されたままになっているのでしょう。

トップクラスの広告代理店は、クルマならトヨタや日産自動車など超有名企業が頼むところです。中規模クラスの社長には、広告代理店なら大手に任せておけば大丈夫、などと安易に考えず、身の丈に合った会社を探すところから始めてくださいと言ってあげたくなります。

制作会社選びでもネームバリューに惑わされる

会社のネームバリュー中心で、ウェブサイトの制作会社を選ぶ人もいます。制作実績を見て大手企業がずらりと並んでいると、それだけでここなら大丈夫だと思って任せてしまうのです。

日頃から大手企業の仕事を中心にしている制作会社は、デザインを重視したサイトを制作するのを得意としています。大手企業はブランディングやイメージ戦略を常に考えているからです。

ところがこういう制作会社は、売上の即戦力となるようなサイトを作ることには慣れていません。その結果、ネット上で商品に興味を持った人をこういう会社が作ったサイトに導いても販売や会員獲得に結びつかず、効果がまったくなかったということが起きてしまいます。

パートナー選びをするのにネームバリューにとらわれると、こんな落とし穴があります。どの会社に頼むかよりも、むしろどんな担当者がついてくれるかという事のほうが大切です。ブランド品を買うのとはわけが違います。無名でも小さい会社でもかまわないので、自分たちにふさわしい仕事をしてくれるウェブマーケターや制作会社を探しましょう。

ウェブマーケティングの認識が間違っていることに気づいていない

次は、頭の切り換えができないでいるというパターンです。ウェブマーケティングといえば、このやり方しかないと決めつけてしまっているのです。殊に、いまだにSEOにしか目が行かない場合が目立ちます。

「SEOもいいですが、ほかにも手段はあります。御社のビジネスを分析したうえで、ターゲットとなる購買層にうまく響く方法を考えましょう」

こんな説明をしてもなかなか聞き入れようとしません。経営者やウェブ事業担当の窓口がSEOこそが特効薬だと思い込んでいる会社は、それを単品で押してくる会社の思うツボです。「その通り。SEOこそ特効薬です」とすぐに契約書を取り出してくることでしょう。

リスティング広告やディスプレイネットワーク広告など複数のプロモーション手段を紹介されると、「うちは予算がないからそんなにできない。どれかひとつに絞らないと」としり込みしてしまう人もいます。ウェブマーケティングはお金がかかるという印象が強いのか、2つも3つも手を付けたらたいへんな費用がかかってしまうと思ってしまうようです。

しかし、初期費用を抑えて無駄なクリックをなくすなど運用の工夫をして、限られた予算でもいくつかの施策を並行して走らせることはできます。要は予算の範囲で最大の効果を出す方法を考えることが大切です。ウェブだけにこだわらず、雑誌などの紙媒体やダイレクトメールなどを組み合わせてもいいのです。発想を最初から狭い枠に閉じ込めてしまうことはありません。

サイトを作るなら絶対にデザイン重視だとか、ウェブで自分たちの商品の価値や事業にかける思いをどうしても伝えなければというこだわりを持つ会社もあります。しかしお金がないからと、最初の一歩を踏み出せずにいます。

理想を思い描くのはいいですが、それだけでなくどうやってそれを実現するかを考えないと、理想のままで終わります。まず売上を伸ばすウェブマーケティングを実践して利益を得てから、やりたいことに手を付ければいいのです。しかしそう提案をしても、やはり頭の切り換えができなくて、自分たちがやりたいこととは違うと言って受け入れてもらえないこともままあります。

契約は、社長や役員が業者の顔を見てから決めるべき

ウェブマーケティングでの成果は、社長や役員クラスの本気度にも関係があります。  大企業なら話は別ですが、そもそも「ウェブ担当」という概念を捨ててほしいと私は思っています。ウェブマーケティングに関しては、社長や役員という経営の中枢にいる人たちが直接関わるか、そうでなければ経営企画など社長直属の部門の仕事と位置づけるべきです。

プロモーションやマーケティングは会社の業績を大きく左右しますから、それをどこに任せるかの判断は、社長として一、二を争う大事な仕事かもしれません。

ウェブマーケティングは、結局はどうやって商品を売るかという話ですから、経営に携わっていて、事業戦略の話ができる人が出てこないと成果が出せません。

特に中小企業であれば、正式に契約をする前に一度は社長が営業に来た広告代理店などの担当者の顔を見ておくべきです。もし同席できなければ、信頼している二番手とか三番手の役員クラスが出て行って、社長と相談した上で決めます。ウェブに少し詳しいというだけの一般社員に、君が担当だからとウェブマーケティング会社選びを任せてしまうのは荷が重いというものです。

それなりに予算もかけてプロモーションをやるのですから、社長や役員がノータッチではどうかと思いますが、社員が20人とか30人、あるいは数名でも、担当者に丸投げしていたりします。社員に丸投げしてしまうとコンバージョンの数字は向上しなくても放りっぱなしになり、ウェブマーケティング会社に食いものにされても気がつかないままになってしまうかもしれません。

そもそもウェブマーケティングで何がしたいのか明確でない

ウェブマーケティングについて勘違いしていたり、思い込みが激しい人がいる一方で、逆になんのプランもなしにやっていて、この人は何をしたいのだろうと疑問に思うときがあります。  問い合わせがあって訪問すると「うまくいってないんだけれど、何かいいアイデアない?」と聞かれたりします。

こういう会社は、契約先を替えては相手が勧めてきた通りに広告を出してみて、どうもうまくいかないからまた次を探すということを繰り返しています。

ウェブマーケティングでどんなことができるのですかとか、今ここが困っているから改善できませんかと聞くのなら話は分かります。しかし、ただざっくりと「何かない?」では答えようがありません。

それでもなんとかしようとして、今の経営状態はどうですか、売りたい商品はなんですかと質問してくるのは良心的な会社です。普通は面倒なので適当に選んだリスティング広告やランディングページ制作のプランを説明し、費用はこうですがいかがでしょうとおざなりな提案をすることになります。事前に検証もせず、仮説も立てずにただやってみるだけですから、ターゲットにヒットして売上が伸びるとはとても思えません。

たとえば病院に行って、自分の悪いところを説明する前に「先生はどんな治療ができますか?」と聞く患者はいません。お医者さんも、まずあなたの症状を話してくださいと聞いてくるはずです。どうしてほしいかよく分からないけど、とりあえずこういう薬があるから試してみる? と言って処方されたら、普通の神経では怖くてとても服用できません。

それと同じようなことが起きていると考えれば、いかに奇妙な状況かが理解できます。

リテラシーが低いクライアントこそ業者のカモになる

情報を出さない、あるいはもともと持っていないクライアント担当者はマーケティング戦略などには興味がなく、予算の範囲に収めることしか頭にありません。そして安く済む広告代理店や制作会社を選んでしまいます。しかし、手数料を下げて仕事を受ける代理店は実際にはほとんど何もしてくれないので、また別の会社に「うまくいってないんだけれど、いいアイディアない?」と聞いて回ることになります。

身体の状態を知るには、問診のほかに体温や脈拍数、呼吸数、血圧というバイタルサイン、血液や尿などを検査した数値が参考になります。企業経営の場合はこれにあたるのが売上高や利益額などの経営指標、販売実績や経費などの情報です。こうした情報がなくては治療計画を立てられません。

マーケティングでも、いくら予算がかけられるのかをもとに、利益を出すために売上がいくら必要かを試算します。ここまでは第一段階なのですが、それさえしていない会社は珍しくありません。さらに顧客層の年齢分布、性別、居住地域、年収などの情報を、申込書やアンケートなどを元に出してもらえれば、どんな手段をどう使おうかという計画が立てられます。

このような情報を事前に集計してある会社は、ふだんから自分の身体検査をしているようなもので、何をするにしてもすぐに対応できます。さらに前の広告代理店と契約していたときの情報があると、その時点で何がよくなかったかも見当がつきます。その問題を潰すためにまた別の情報を取って活用していけば、ウェブマーケティングの中身がより充実したものになっていくのです。

こちらのコンテンツはこの書籍から抜粋しております。

書籍名:ウェブマーケティングという茶番 著者:後藤 晴伸 (後藤ブランド株式会社)

青山学院大学国際政治経済学部を卒業後、凸版印刷株式会社入社。 電通・電通テック担当として、大手企業の紙媒体を中心とした広告制作を担当。大手インターネット広告代理店、株式会社セプテーニへ転職し、SEMコンサルタントとして数十社のリスティング広告の運用を担当。その後、取締役としてウェブマーケティング会社の立ち上げに参画。孫請け、ひ孫請けとしてウェブマーケティングに携わる中、業界特有の構造への疑問が強くなり、2014年に独立し、後藤ブランド株式会社を設立。経営改善にまで踏み込んだ提案力、クライアント企業への遠慮のない物言いで、数々の中小企業の売上増に貢献。 後藤ブランド株式会社代表取締役。

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