【連載第2回】自社の利益ばかりを追いかけるな! 社会問題の解決がビジネスの機会を創出するワケ

著者:細田 悦弘

2019.10.10

社会における企業の役割が問われる現代において、重要な概念になっているのがCSRです。CSRはここ数年で進化を遂げ、もはや「企業の社会的責任」といった狭い意味には留まっていません。社会の期待に応えながら経済的価値を創出する「価値共創型CSR」のアプローチが求められる時代になっています。

目次

基本的なCSRはやって当たり前! 怠れば企業存亡の危機を招く

社会的責任の国際規格ISO26000では、社会的責任を「組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して組織が担う責任」と定義しています。
企業がこの世に存在し、事業を営めば、地球や社会に必ず影響を及ぼします。その影響にはポジティブとネガティブ、正の影響と負の影響があります。
たとえば、個人の水や電力の消費量は限られています。一方、企業は個人とは比較にならない量の水や電力を消費します。企業の負の影響です。

まずは、自社のビジネスが人権・労働、消費者や環境などに悪影響を与えるのを防ぐ、あるいは緩和することが要請されています。この要請に応えるのが「基本的CSR」です。これを怠ると、「今どきそんなこともやっていないのか」という烙印を押され、規模の大小、業態に関わらず、企業存亡の危機を招きます。 基本的CSRを行うことは、企業イメージを損なうリスクを回避することにもなります。そのため、「リスク対応型CSR」ということもあります。

企業に必要なのは期待に応えるCSR! ステークホルダーからの信頼を獲得する

一方、企業は社会に正の影響を与えることもできます。個人が「社会のために」と一念発起しても、できることには限りがあります。しかし、企業が動けば個人とは比べものにならないレベルで良いことができます。

自社の強みを活かして事業を行い、それが社会課題の解決といった正の影響にもなる。これは言い換えると、経済的価値を創出しながら、社会的ニーズに対応することで社会的価値も創出するということです。そのため、こうした活動を「価値共創型CSR」と呼びます。米国の経営学者マイケル・ポーターらが提唱する「CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)」のコンセプトは、まさにこの「価値共創型CSR」に合致するものです。

負の影響を防ぐ、あるいは緩和する「基本的CSR」が社会から「要請」されるものだとすれば、正の影響を与える「価値共創型CSR」は社会から「期待」されているものといっていいでしょう。また、「基本的CSR」がやらなければならないmustだとすれば、「価値共創型CSR」はやるべきshouldだということもできます。

「基本的CSR」と「価値共創型CSR」は、どちらか一方だけをやればいいというものではありません。両方を行い、社会の「要請」と「期待」にしっかり応える。これがステークホルダーの信頼につながります。また、自分達の「らしさ(得意技と個性)」を発揮して両方のCSRを行うことが、ステークホルダーの愛着につながります。 この信頼と愛着が「見えざる資産(無形資産)」となり、ブランド力、企業価値の向上につながり、ステークホルダーから選ばれる要因となります。

経済的価値と社会的価値は、“トレード・オン”

CSRは、オン・ビジネスで事業によって行うことも、オフ・ビジネスで事業外の活動によって行うこともできます。経営層のなかには、地域のボランティア活動に参加するといったオフ・ビジネスのCSRをイメージする人も少なくありませんが、本業によりオン・ビジネスでCSRを行うというのが先進のCSRの考え方です。

一方を追求すると、もう一方が犠牲になるような関係をトレード・オフといいます。CSRは、社会貢献にはなるものの、事業の負荷やコストになるというトレード・オフで認識されることが少なくありません。しかし、社会貢献になり、事業のプラスにもなるというトレード・オンが成立するというのが先進のCSRである「価値共創型CSR」です。経済的価値を創出しながら社会的価値も創出するという、ビジネスの機会創出につながる戦略的なCSRです。

事例に学ぶ、期待に応える戦略的CSRによる企業ブランディング

戦略的な「価値共創型CSR」とは、どのようなものなのか。具体的な事例で見てみましょう。 2017年、ある大手銀行が東京の有名私立大学のキャンパス内に本店を移転しました。大手銀行が大学のキャンパス内に本店を設けるのは初めてということです。この銀行によると、ビルの1階が資産運用などを相談する店舗、7階から16階が本社で約1200人のスタッフが大学構内で勤務しているそうです。顧客は大通りに面している入口から店舗に入ることができます。

「銀行」からすれば、
●大学の持つ分析のノウハウを活かし、シニア世代の消費動向に関する共同調査を行うなど、大学とのシナジー効果が生み出せる。
●現役の銀行員が銀行の実務を教えるビジネス講座を開催するほか、立地を活かし大学との連携を深められる。
●さまざまな業界で人手不足が深刻化するなか、人材確保に有利になる。 といった事業面でのプラスがあります。

また、「大学」にとっても、
●少子化に伴って学生の確保が課題となるなか、安定した賃料収入を得られることにより、その収益を留学生や遠方出身の学生への支援を目的とした奨学金などに充てられる。
●学生ならびに研究者に対し、金融をテーマにした学習・就業体験・研究機会を広く提供してもらえる。
●学生の就職相談やインターンシップなども積極的に受け入れてもらえ、就職活動の支援につながる。
などのメリットがあります。
そして「社会」にとっても、近年の厳しい雇用情勢、実践的な人材育成の変化、多様な職業教育ニーズといった、学生と社会・職業の間に横たわるさまざまな課題の解決に資する取り組みになっています。

ここでは、大学、社会に対する貢献が銀行の事業のプラスになっているというトレード・オンの関係が生まれています。戦略的な「価値共創型CSR」が、銀行(と大学)のブランド力の向上に寄与しています。

CSRは、決して事業のマイナスになるが社会のためにやらなければいけない行動ではありません。戦略的に取り組むことで、事業と社会、両方のプラスを生むことができます。これがいま必要とされているCSRへのアプローチです。

(こちらのコンテンツは書籍『選ばれ続ける会社とは 〜サステナビリティ時代の企業ブランディング』から抜粋しています)

こちらのコンテンツはこの書籍から抜粋しております。

書籍名:選ばれ続ける会社とは 〜サステナビリティ時代の企業ブランディング 著者:細田 悦弘

細田 悦弘
中央大学大学院 戦略経営研究科 フェロー / 一般社団法人日本能率協会 主任講師
1957年、愛知県生まれ。中央大学法学部卒業後、キヤノンマーケティングジャパン(株)入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、同社・CSR本部に所属しながら、企業や大学での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。

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