「死ななくてもよい死」は「食べる力」で防げる口腔ケアの大切さを広めることが使命

どんな書籍にも、著者の情熱、熱い想いが存在する。彼らが本を「書かざるを得なかった」のは、いったいなぜなのか――。著者自らが、書籍執筆に至った情熱を明かす「覚悟の一冊」。今回登場する橘真優氏は、保険代理店や不動産業、飲食店経営など、多岐に渡った事業を野心的に展開する企業グループを率いるトップ。「転職者の6割が年収ダウン」という現状に疑問を抱き、『満足年収――転職で給料2倍も夢ではない』では、年収を上げる具体的なテクニックを惜しみなく披露した。橘氏の考える、新しい「人材雇用」の姿。現代日本にまかり通る古ぼけた慣習をくつがえす、壮大な志に迫る。

著者インタビュー

「食べる力」は「生きる力」。

Q. 先生は歯科医師でいらっしゃいますが、なぜ「食べる力」についての書籍執筆に至ったのでしょうか。

今、日本人の約10人に1人が肺炎で亡くなっています。厚生労働省の調査でも、いまや肺炎は脳血管疾患を抜いて死因の第3位となっており、その対応が急がれています。高齢者の肺炎の主な原因が、食べ物を誤って気道(気管支)に飲み込んでしまう「誤嚥(ごえん)」であることは、「口の健康をあずかる医者」として看過できません。以前から、誤嚥性肺炎の増加には危機感を感じていました。

「食べる力」は誤嚥を防ぐのはもちろん、認知機能を高めることもわかってきています。「食べ物を認知し、口に入れ、噛み、飲み込む」という一連の動作は、脳の機能と運動機能をフル稼働して行います。何気なく行っているこの動作も、維持するためには口やのどの筋力が欠かせません。筋力が衰えると「食べる力」も衰え、認知機能に影響を及ぼしてしまうのです。

地域の歯科医師会などで、「かむ」「のむ」といった「食べる力」についての講習が開かれるなど、「食べる力」の重要性は周知が図られるようになってきています。しかしまだまだ認知不足だと、私は考えます。例えば、「食べる力」の強化が誤嚥性肺炎を防ぐこともほとんど意識されておらず、ケアが行き届いていない状況です。「食べる力」を維持・回復することの重要性をもっと広めたい。漠然とではありますが、そう感じていました。そんな折、私の父親(当時85歳)が交通事故に遭ったのです。頚椎や骨盤の骨折で2か月にわたって寝たきりの療養を余儀なくされ、しかも入院直後はチューブで栄養を摂る状態でした。

病気や怪我がきっかけで入院をした後、患者は二通りに分かれます。退院したものの寝たきりの生活が続いてしまう人と、入院する前のような生活を取り戻せる人です。その違いは、まぎれもなく「食べる力」の有無にあるのです。

父の入院中は毎日口腔ケアを行いましたが、父がどんどん元気になっていくのを見て、「食べる力」はまさに「生きる力」だと感じ、改めてその重要性を認識することになりました。そして、いまだ認知度の低い「食べる力」の大切さをもっと広めていかなければならないと確信したことが、今回の執筆の原動力になっています。

口の機能を維持・回復させる「そうじ」と「トレーニング」

Q. 現在ではお父様はとてもお元気だそうですが、どのようなケアをされたのですか。

ICUの中で、寝たきりでチューブから栄養を摂らざるを得ない状況の父に会ったとき、まず思ったのは、「何もしなければこのまま退院後も寝たきりになってしまうのではないか。入院前のように、まだまだ健康でいてほしい」ということでした。そして、そのためには「食べる力」を衰えさせてはいけない、そう考え、すぐに口腔ケアを始めました。

まず誤嚥性肺炎を防ぐために、口の中をきれいに保つこと、のどの筋肉を維持することを目指しました。肺炎は、口の中のばい菌が肺に入って起こったり、あるいはチューブで直接胃に送られた流動食や胃液が逆流しそれを誤嚥して起こることもあります。口の中を清潔にすることでばい菌の増殖を防ぐと同時に、流動食や胃液が逆流してもそれを飲み込むための筋力をつけておかなければなりません。

口腔ケアとは、「口のそうじ」と「口のトレーニング」を指します。父のように入院していて自分でケアができない場合、歯の表側は看護師さんがきれいに磨いてくれますが、なかなか裏側までは磨いてくれません。さらに口呼吸で口の中が乾燥することから、痰が固まったものが粘膜にくっついていたりと、思ったよりも口の中は汚れているのです。

まずは歯ブラシや歯間ブラシで汚れを取り除くところから始めます。歯の裏だけでなく舌や唇の裏、頬の内側、上あごなどにも汚れがついているので、粘膜を傷つけないよう、口の中を湿らせて、優しく汚れをとります。このとき注意したいのは、取り除いた汚れを飲み込ませてしまわないよう体を横に向け、汚れはガーゼでしっかりと受け止めること。さらに歯ブラシの柄を使って口の内側から頬を刺激して、頬の筋肉が柔らかくなるよう動かしてあげます。

「口のそうじ」と並行して、「口のトレーニング」も行いました。私は、父が口から食事を摂ることができない間、ことあるごとに「エッヘンして」「ゴックンして」と言い続けていました。咳をして異物を吐き出す力と、飲み込む力を保つためです。また同時に「パ・タ・カ・ラ体操」を試みました。これは「パ」「タ」「カ」「ラ」をそれぞれ連続ではっきりと発音することで、食べるのに必要な筋力を維持・回復させる体操です。

その人の状態によってケアの方法は変わりますが、こうした「口のそうじ」と「口のトレーニング」が誤嚥性肺炎や認知機能の低下を防ぎ、「食べる力」につながります。父の入院を通して、私はまさに口腔ケアが健康寿命を伸ばす現場に立ち会ったのです。

健康寿命をのばす口腔ケアを広めることが私の天命

Q. 口腔ケアは、誰にでもできるのでしょうか。

私は歯科医師で、講習なども受けていましたから、父が入院したときに「すぐに口腔ケアをしなければ」という考えに至りました。しかし、もし身近な人が入院したときに、まず口腔ケアをするという発想になるかと言えば、現状の口腔ケアの認知度ではまだまだ難しいと言わざるをえません。

前述したとおり、口やのどを使わないでいると、その部分の筋力は弱っていき、「食べる力」がどんどん衰えてしまいます。この「食べる力」の衰えは死に直結しますが、逆に言えば、「食べる力」を維持・回復すれば「死ななくてもよい死」を防げるということです。

もし身近な人が入院することになれば、ご家族も動揺してしまうでしょう。しかしお見舞いをして励ますだけでなく、ぜひ「ご家族にしかできないこと」をしてほしいのです。

本書ではご家族が行うケアのほか、自分で行う口腔ケアの方法も掲載しています。若く健康なうちから継続して口腔ケアを行うことが、健康寿命をのばすことにつながるからです。
他の臓器と異なり、口は直接見たり、自分で手入れすることができる唯一の臓器と言えます。一人でも多くの方が口腔ケアを知って実行することが、日本人全体の健康寿命の延ばすのです。

口腔ケアで健康になることは、ケアを受けた本人も、そのご家族も幸せにします。自分が体験してその幸せを実感しているからこそ、この幸せを多くの方に広げたい。これは歯科医としての私の天命です。健康で長生きできる人が増えていくことを目指して、私はこれからも活動していきます。

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