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看護師・介護士の離職を防止するために――いま注目の在宅ケア組織「ビュートゾルフ」とは?

著者:GMCブランド戦略室

各国の注目が集まる在宅ケア組織

 看護師を中心に自律型のチームで包括的な看護・介護を提供するオランダの在宅ケア組織「ビュートゾルフ」。
 訪問看護、介護、リハビリの機能を有し、オランダではシェア60%以上を誇っています。この非営利の在宅ケア組織は、2007年に数名の看護師たちによって設立され、7年のうちに約750チーム(約8,000人)が所属する巨大な組織に成長、その仕組みは諸外国へ広がっています。日本を含むアジア諸国でも注目されており、日本では一般財団法人オレンジクロスが指揮を執るようです。
 このビュートゾルフ、ほかの在宅ケア組織と違うのは、自立したチームを組んでいるという点です。分業せずチームでトータルケアを実践し、それぞれに大きな裁量権が与えられていますので、日本トップダウン型の在宅ケアとは大きく異なっています。

 

スタッフの能力を引き出す組織の仕組み

ビュートゾルフでは1チーム10人前後で構成されており、うち7割を看護師、残りの3割を介護士やリハビリ関連職という内訳となっています。通常、在宅ケア組織に占める看護師の割合はそれほど高くありませんが、ビュートゾルフのチームにいるスタッフはほぼ看護師です。
人口約1万人圏内の利用者約40~60人に対して、訪問看護、介護、ケアマネジメント、リハビリ、予防といった総合的なケアを提供します。チームには管理者も事務職も存在せず、バックオフィスと呼ばれる本部と、各チームを担当するコーチが、オランダ全土で活動するチームをサポートしているのだそう。
このチーム、実は、上下関係がないフラットな環境で、ベテランも若手も意見を出し合うことができるので、個々のスタッフの能力や職業倫理に対する信頼性を高め、チームの誰もがリーダーシップを発揮しやすくなるのです。その為、ビュートゾルフは専門性が高いと認識され、ほかの在宅ケア組織と比べ、対応が難しい患者さんを紹介されるケースもあるようです。
このようにチームの誰もが、自分の意見を発信し、リーダーシップを執れる環境が、看護師のやりがいにもつながっています。オランダでは、離職率5%という素晴らしい数字を誇っており、実際従事している人たちにも受け入れられているシステムだということを物語っています。

 

日本国内の医療現場にも求められる変革

ビュートゾルフには現場の意見を反映させて開発したビュートゾルフ・ウェブという独自のシステムがあり、利用者情報やシフト管理、申し送り・記録の共有といった業務管理機能や、事例、イノベーションなど看護師のナレッジについて共有・議論するためのコミュニティ機能が主となっています。このようなICTの活用は、日本の在宅ケアにも適応可能ですが、日本の現場にはICTに詳しくない世代がまだまだ多いという課題もあります。
また、管理者のいない現場でどのように動いていくかという点も大きな課題になるでしょう。日本ではほとんどの看護師が病院や診療所に所属し、トップダウンで指示待ちという環境が多いそうで、能動的に動くことに慣れていません。これは、ケアマネージャーのケアプランに沿って動かなければならない、介護保険制度の仕組みにも問題があるようですが、能動的判断と責任を持つことに対し、日本の看護師がどう感じるかを調査していく必要がありそうです。
文化や制度の違いなども含め、考慮すべきことは多々あるでしょうが、ビュートゾルフのような環境で働くことができれば、看護師や介護士の離職率の上昇に歯止めをかけることができるのではないでしょうか。

 

幻冬舎メディアコンサルティング

岩木 里圭

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